あらがうもの
□魔法薬の先生
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「そういえば、フィービーは漏れ鍋でスネイプと握手したがっていたよね。あんなやつのどこがいいの?」
ハリーの直球すぎる質問を聞いたロンは、吐き気をもよおした顔をこっちに向けた。
フィービーは赤毛の幼なじみを睨んでから答えた。
「スネイプ先生の魅力はたくさんあるけど、一番にあげるとしたら声だね。ベルベットボイスでささやくように名前を呼ばれると、もう……」
「もういいや。僕も気持ち悪くなってきた」
失礼なことを言ってのけたハリーは、スネイプ先生の理不尽な言動をぶちまけはじめた。
「スネイプは僕が教科書を開いて見なかったのは、シリウスの監督不行き届きだなんて言ったんだ。しかも牢獄暮らしが長かったから、教科書という概念が抜け落ちているとか言って!」
「気にするな、ハリー。スネイプは生徒という生徒はみんな嫌ってるんだ」
ハグリッドはなぐさめになってないことを言った。
「でも、僕のことは本当に憎んでいるみたい。スネイプは僕の父さんやシリウスやリーマスたちと仲が悪かったって聞いたけど、僕まで嫌うなんて何かあったのかな?」
「ばかな。なんでハリーを憎まなきゃならん?」
あからさまに視線を泳がせたハグリッドを、ハリーは探るように見た。
たぶんハグリッドは、ジェームズ・ポッターが率先してスネイプ先生をいじめていたことを、知っているのだろう。
ハグリッドは話題を変えるため、ロンにチャーリーの近況を聞いた。
ドラゴン使いになったチャーリーはルーマニアで仕事をしていて、角取引で数が減少したルーマニア・ロングホーン種の繁殖計画に関わっているようだ。
「ルーマニア・ロングホーン種は長い角で獲物を刺して火で炙って食べる、珍しい習性を持つドラゴンだよね。ルーマニア・ロングホーン種の繁殖計画に携われるなんて、うらやましいな」
「よく知ってるな。おまえさんもドラゴンが好きなのか?」
「愛しているよ」
フィービーが即答すると、ロンは驚きのあまり椅子から転げ落ちた。
テーブルの上にあるものをいじっていたハリーは、あんぐりと口を開けた。
「俺もだ。ガキの頃からずーっとドラゴンが欲しかった」
「ハグリッド……1709年のワーロック法で、ドラゴン飼育は違法になったんだよ。それに、フィービーのパパは魔法生物規制管理部に勤めているんだ」
ロンが余計なことを言ったせいで、ハグリッドに警戒の色が走った。
ノルウェー・リッチバックの孵化に立ち会えないとホグワーツに来た意味がないので、フィービーはエイモスから聞いたドラゴン密輸の話をした。
ハグリッドはコガネムシのような目を輝かせて聞き入っている。
卵の非合法取引の議論に差し掛かったとき、ハリーが口を挟んできた。
「グリンゴッツ侵入があったのは、僕の誕生日だ。ハグリッドはあの日、漏れ鍋で僕たちと会って、713番金庫に一緒に行ったよね?」
ハリーはティーポットカバーの下敷きになっていた、新聞の切り抜きを手にしていた。
「713番金庫は盗まれる前に空になっていたって、新聞に書いてある。泥棒が探していたのはもしかして、ハグリッドが持ち出した小さな包みじゃないの?」
ハグリッドはハリーの興味を逸らすべく、ロックケーキを勧めた。
それだとハリーの関心は引けないと判断したフィービーは、「さっきの話の続きだけど」と言って会話に割りこんだ。
「中国火の玉種の卵の殻は、中国魔法で利用されている。欧州でもドラゴンの卵の殻に魔法効果が見込めるんじゃないかって、注目されているんだよ」
「グリンゴッツに強盗に入ったやつの目的のほうが、注目されているって」
「俺はフィービーの話が聞きてえな。ダンブルドアみたいな大発見をしようと目論むやつは、ごまんといるぞ」
「まっとうな魔法薬学者は正規ルートでドラゴン使いと交渉するけど、そうじゃない連中は手段を選ばない。闇に流れたドラゴンの卵は、孵る前に壊されちゃうんだ」
「なんて酷いことをしやがる!」
怒りの声をあげたハグリッドは、この世に生を受けられなかったドラゴンを思って涙をこぼした。
ハリーはロンと一緒にグリンゴッツ侵入事件の記事を読んで、なにやらこそこそ話していた。
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