月に祈りを

□救出
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遡る事二十時間前――

「かなり小さな時の写真しかありませんが――おそらく彼女は――瀧本陽花でしょう」
「――そうでしたか」
Lはマシュマロの入った袋を机に置いた。
「色々調べましたが、瀧本明彦の妻は二年前に蒸発しています。
それから、明彦はアルコール中毒の症状を見せ始め、近所でも評判が宜しくなかったようです。
――虐待の噂もあったとか」
ワタリの顔はひどく悲しげであった。
ワイミーズハウスの子供であった陽花の境遇を嘆いているのだろう。
「……恐らく、マスコミが彼女の家に押しかけているでしょうね。
キラに殺された犯罪者の遺族など、格好の餌ですから」
Lも、幼かった陽花の顔を思い浮かべ、溜息を吐いた。
時が過ぎれば、報道陣もこの事件の事など忘れてしまうだろう。
しかし、彼女の傷は一生根深く残る。
Lはぼそりと、小さく呟いた。
「ワタリ、彼女を――」

その言葉に、ワタリは笑顔で頷いた。
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