月に祈りを
□視線
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「夜神君、今日塾はないの?」
「ああ」
陽花の問いに、月は機嫌が良さそうに答える。
今日、陽花は、月の家に本を借りに来ていた。
(一応、メールしとこう)
竜崎とは、ここ一週間程会っていなかった。
たまにワタリが様子を見に来るが、本当にそれだけだ。
相当仕事が忙しいのだろう。しかし、ワタリは陽花に何も教えてくれない。
ふう、と溜息を吐くと、月が立ち止まった。
「ここだよ」
「あ、うん」
月はドアノブを捻るが、ドアは開かなかった。
「なんだ、誰もいないのか」
鍵を取り出し、月が施錠を解除する。
陽花は月に促され足を踏み入れた。