月に祈りを

□救出
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「……」
陽花が目を覚ますと、美しい模様の天井が視界に映った。
もぞもぞと体を動かし、辺りを見回すと、ダブルサイズのベッドが二つ置いてある。
どうやら、ここはホテルの一室らしい。
呆然としていると、ノックの後、ドアが開かれた。
「お体は大丈夫ですか」
「――ワイミーさん」
「――今は、ワタリとお呼び下さい」
ニコニコと微笑みながら、ワタリがワゴンを引いて入室する。
ワゴンには、ルームサービスで取ったのかたくさんの料理が乗せられていた。
「何も食べていないようでしたので」
「いえ――あまり、食欲が」
陽花が俯くと、ドアがキイと音を上げて開いた。
「食事を取らないと、体が持ちませんよ」
ワタリとは別の、淡々とした声がドアの方から聞こえ、陽花は振り向く。
そこに立っている奇怪な風貌の男に、陽花は目を丸くする。
「二日程何も食べていないみたいですから」
「あ、あの――」
陽花は慌ててワタリを仰いだ。
ワタリは大丈夫だとでも言うように深く頷く。
「こちらは竜崎です」
「――どうも」
男はぺこりと会釈した。
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