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□部下組 妖怪パロ
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童子の森、この森には人間を愛する妖怪達が何故か集まる妖怪の森だ。
妖怪と言われれば、人に害を及ぼすバケモノをイメージし、恐れるだろうが、この森周辺に住む人々は恐れるどころか、普通に話しかけてくる。それはもう、家族かのように・・・
「妹子様〜」
童子の森のすぐ横にある村にすんでいるおばあさんが、一番高い木の上にいた烏天狗、妹子に声をかけた。
妹「あ、クミおばあさん。どうしました?」
妹子はおばあさんに気付くと、木から降りおばあさんの前に立った。
「また子供達が妹子様と遊びたいと言ってるんだけど、いいかしら?」
妹「あー、わかりました。」
妹子はおばあさんを抱き上げ、ゆっくり上がると村へ飛んだ。
村へ着くと、妹子は子供達に囲まれもみくちゃにされた。
妹「ちょっ、やめて!やめてぇ!」
妹子が「やめて」と叫ぶが、まったく止めてくれる気配はない。
「妹子様ー!」
「妹子さーん!」
「妹子ちゃーん!」
妹「誰だ今妹子ちゃん言ったの!?」
妹子は妖怪の中で一番人間を愛している。だから大抵の事は「しょうがない」と許すが、ちゃん付けされるとキレる。だが、決して暴力はふらないため、子供達はふざけてちゃん付けする子が多い。それと、もうひとつ理由がある。
曽「いいじゃないですか。貴女、女性なんですから」
妹「やっぱりあんたか!」
曽良だ。
曽良は狐の中でも一番位の高い九尾狐で、森の妖怪達をまとめたりしていることで有名だ。が、どこか抜けていて不思議な妖怪としても有名だ。
妹「だから、ちゃん付けしないでって言ってるじゃないか!」
そう怒っている妹子にお構い無く、曽良は妹子にだらんともたれかかった。それを見て、「ボクも!」「私もー」と子供達も妹子にもたれかかった(というか、抱き付いた)。
妹「・・・いい加減離して」
その後1時間近く経っていた。子供達はふかふかの曽良の尻尾と、母親のような優しい匂いの妹子に包まれ、ぐっすりと寝てしまっていた。先程の妹子の言葉は、未だにくっついている曽良への言葉だった。
曽「いいじゃないですか。というか、」
ーー昔を思い出しますね。
昔の、まだこの森が童子の森と呼ばれる前の事・・・
「グスッ、ウウゥ…」
この森は、昔から人を食べるバケモノがいるという噂で、子供が捨てられる時は必ずと言っていいほどこの森に捨てられる。
「またか、可哀想に…」
親に捨てられ道に迷い森から出られずに泣いている子供を、木の上から見ていた一匹の烏天狗、妹子がいた。そのまわりには、狐や鬼、烏が同様に子供を見ていた。
妹「曽良君、鬼男君、皆を」
妹子は隣にいた狐、曽良と鬼の鬼男にそう言うと答えを待たずに子供の下へ降りていった。
妹「大丈夫?君、捨てられたの?」
「ヒィ、、お、お化け…!?」
「お化けではないなぁ」と言いながら妹子は子供に近付いたが、それに合わせ子供は後退る。
妹「怖くないよ、僕は君に危害を加える気はないから・・・」
妹子は優しい声で言うが、子供はそれも怖かったようで、走って逃げてしまった。だが、その逃げた方向から子供達の遊ぶ声が聞こえ、子供はさらに混乱してしまい、その場にうずくまってしまった。
「あれ?あそこに誰かいるよ?」
「本当だ、新しい家族かな?」
子供達は、うずくまった子供を見付けると直ぐにその子の下へ集まった。
「ねぇ、君どうしたの?親に捨てられたの?」
「僕らと遊ぼうよ。名前、何ていうの?」
「君は、私たちの新しい家族?」
質問攻めにされた子供は、とうとう泣き出してしまった。それを見て、子供達がおろおろしていると、妹子がその子を抱き上げ、背中を優しく擦りながら「新しい家族だよ」と言った。
しばらく擦っていると、落ち着いたのか「ありがとう」と鼻をすすりながら言った。
妹子はその子を下ろすと、名前を聞いた。
妹「君の名前は?」
「ユ、ユウタ・・・」
妹「そう、ユウタ君かぁ、いい名前だね」
名前を聞いた子供達は、「ユウタ君だね!」「私、アヤナ!」と、自己紹介をしていた。それを見て、妹子はすぐに仲良くなれそうだなと笑っていた。
打ち解けてからは早かった。子供達が自己紹介をし終わると、すぐに皆で遊び始めた。最初から、そこにユウタがいたかのように。
曽「微笑ましいですね」
いつの間にか隣にいた曽良に、妹子は驚くことなく「そうだね」と言った。
遊び疲れると、皆森の中央にある広場に寝転がり体を寄せ合い眠った。そのまわりを妖怪達が子供達を守るかのようにして寝転がる。さらにそのまわりを鬼たちが囲む。妹子はそれを見て「幸せだなぁ」と言った。
昔は、よく子供が捨てられる森だった。が、運良くこの森は人間を愛している妖怪が集まる森だった。この森に捨てられた子供達は、たくましく成長し、やがて森の近くに村を作った。
妖怪と人間が仲良く暮らせる村を。