土銀にょた小説
□たまには休息も必要ですよ
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「お前なんでここにいるんだ?しかも何勝手に人の部屋あがりこんでんだ、さっさと出てけ」
普段から目つきの悪い眼がうつろながら、さらに険悪な雰囲気をまとい俺を見据える。
吐き出しながら呟く土方はなんだか気だるそうで、一目で具合が良くなさそうだと判断できた。
「何見てんだよ」
そう言ってタバコを取り出した土方の手からタバコを奪い取る。
「あっおい、何すんだ。かえせ」
「うーん。とりあえず3日間タバコ禁止な。」
「はあっ!?何勝手なこと言ってんだ!返しやがれ」
躍起になって取り返そうと俺につかみかかってくる土方を逆に掴み返すと。
スカーフをグッと引き寄せて自分の額と、土方の額を合わせて熱があるかどうかを確認してみる。
突然のことに驚いた土方が呆然としたまま固まっている。
「ああ、お前やっぱりな。ちょっと熱あるだろ。この部屋体温計とかないのか?」
土方を離して体温計がないかどうか、文机や引き出し、押入れを探してみる。
「お前一体何しに来たんだよ。人の部屋勝手に漁ってんじゃねえよ。警察の部屋に不法侵入とはいい度胸だな。しょっ引かれてえのか」
と、耳を赤くしながら怒鳴りつけてくる。
「はいはい。病人はカッカしないでおとなしく休んでなさい。」
俺はそう言うと、熱でふらついている土方の膝を足で小突いた。
いつもならこんな油断すら見せない奴が簡単に膝を折ってしゃがみこむ。
そのまま畳の上に座らせて、子供をあやすように
「じゃあ、ちょっと山崎くんから体温計もらってくるから、そこに座って待ってろよ」
と言って出て行こうとすると、すかさず口だけは達者な男が噛み付いてきた。
「お前な!勝手なことすんなよ。まず用もないのに屯所に入るな。本人の断りなく部屋に入るな!」
そう鬼の首でも取ったかのように上から目線で言う土方に。俺はさらに上から言ってやった。
「残念でした。俺今日依頼できてるの。ここの隊士からのな。
3日間俺は屯所の出入りは自由。そしてお前の部屋の行き来も自由。
もひとつおまけにお前の扱いも自由。お前を3日間仕事させないこと。
それが俺の仕事なんだ。
きっちり仕事させてもらうからな。今から3日は仕事させねえから覚悟しろよ」
そうきっぱり言い捨てると、俺はぴしゃんと障子を閉じて、雑務をこなしている山崎くんから体温計をもらい部屋に戻ってきたのだが。
・・・いない。
あんのやろ・・・。
壁のフックに掛けられていた隊服も無くなっている。
仕事行きやがったなあいつ。
これじゃ、俺が仕事してねえって沖田くんに文句言われるじゃねえか!
さっさと捕まえてあいつここに監禁しねえと、今月の家賃払えねえよ。
あいつが行きそうなところといえば。
「ちょっちょっと副長何してるんですか?今日は仕事休みのはずじゃあ」
「はあ?何言ってやがる。俺は休暇届なんか出した覚えはないぞ。だいたい忙しくて休んでる暇なんかねえんだよ」
っと言い放ち、大広間で近藤と並んで上座に座る男めがけて蹴りを入れた。
場内が騒然とする。
ただでさえ疲労と風邪で不調の土方に、不意打ちの形で入った俺の蹴りは一撃で男を沈ませた。
「テッテメェ・・・万事屋・・・」
苦しそうに声を絞り出す男の首根っこを引っ掴むと、「悪りぃな!俺の監督不行き届きで野良犬が脱走しちまった。じゃ、あと続けてくれよぉゴリ。」
そう言ってズルズルと土方を広間から引きずり出して、男の部屋へと逆戻りをする。
隊士たちがぽかんとしていた。
そのうしろから、「さっすが姐さん。姐さんに依頼した俺ぁ天才でさぁ」
という沖田くんの声がした。