BLACK END

□No.05
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目の前に広がる深い深い暗闇







絶ちきられた救いの手







見えかけていた光の木漏れ日







手を伸ばした先に







あなたの姿はない

















No.05 悪の心



















――



神殺の確保のため任務を遂行していた瀬良と五条率いる2つのチームは移動中に神殺の攻撃により大きな被害を受けていた。
そのため少なくなった対妖魔破壊術師達を連れて、神殺が逃げたであろう第二訓練場に来ていた。



「おいおい瀬良ちゃん、ちゃんとここに神殺がいるのかよ」


「あぁ、この第二訓練場に入っていく人影を見た。間違いなく神殺だろうな」



神殺は列になっていた対妖魔破壊術師たちの後ろから攻撃を仕掛けてきたため、先頭にいた瀬良と五条は神殺の姿をはっきりと見ていなかった。

第二訓練場はとても大きな空間となっていて、太い大理石でできた柱が何本か並んでいるだけだった。
人が隠れることが出来る場所はその柱しかないだろう。



「あの柱のどこかに隠れてるって訳だな」



誰もがそう信じて柱に警戒していた。
だが、瀬良だけは何かを考えている様だった。
柱だけではなく、他に見落としている所がどこかにある。
それは一体…
その答えはすぐに導き出され、瀬良は上を向き叫んだ。



「神殺は上だ!!全員気を付けr…」






グサッッッッ





「「ぁ、あ゙ぁぁっっ!!!」」



瀬良の声を聞き取り瞬時に五条、もちろん瀬良も上からの攻撃を避けた。
だが、その素早い攻撃に判断しきれなかった残りの対妖魔破壊術師達の体は、長くて鋭い何かが貫いていた。



「あらら?死んだのは雑魚だけか…やっぱり君達2人がアタリってことか」



床に着地した神殺は、対妖魔破壊術師達に刺さっていたものを乱暴に抜いた。
その勢いにより、彼等の体は第二訓練場の隅へと飛ばされ、辺りは赤く染まった。



「ねぇ、瀬良ちゃん?俺さ、神殺のこと舐めてたわ…」


「あぁ…俺もだ」



本物の神殺を目の前にして、五条の表情は苦しいものとなった。
それは瀬良も同様で、彼の瞳は細められた。



「とりあえず自己紹介でもしようか!僕の名前は"アーロイン"。君達の思っている通り…神殺だよ」



丁寧に自分の名を名乗りながら、右頬を隠していた長い髪を掻き上げた。
綺麗な白い右頬には、次第に大きな傷が現れた。
今までは警察官に化けるために傷を消していたのだろう。



「コイツ…さっきレイヴンが言ってた奴にバッチリ当てはまるんだけど…」


「五条、戦闘態勢に入れ。………解放を許可する」


「は?いいのかよ瀬良ちゃん!規定違反になるぜ?」



瀬良はアーロインから目を離さずに五条に言う。
五条の言う通り、対妖魔破壊術師の力の解放は本部指令室からの解放許可を貰わなくてはいけない。
もちろん解放許可を貰わずに力の解放をすると規定違反となり処罰を食らう。



「今は緊急事態だ。それに、全ての責任は俺が取るから問題ない」



いつ攻撃を仕掛けてくるか分からない神殺を目の前に力の解放は必須だ。
いつも以上に瀬良のアーロインに向ける視線は鋭いものだった。
彼がここまで警戒している姿は滅多に見ない。
妖魔を何体も倒してきたプロの目に狂いはないはずだ。
それだけヤバイ相手なのだろう。



「OK!許可頂きました!!」



五条は瀬良の指示に従い、瀬良とアーロインから距離をとった。
そして次にアーロインに向けた五条の表情は真剣そのものだった。



「ん?あぁ…力の解放ね。いいよ!戦う準備が出来るまで僕は待っててあげるよ」


「随分と余裕じゃんか!後で後悔しても知らねーぞ!!」



五条は、余裕な態度をとるアーロインに言うと一度目を閉じた。
すると五条の立つ第二訓練場の床に一つの陣が現れ、それと同時に下から上に上がるように風が吹く。
そして閉ざされていた目を開き、唱えた。



「対妖魔破壊術師"五条悟"!

対妖魔破壊殲滅術式

………解放!!」



五条の"解放!!"の唱えと共に、風は急激に強くなりやがて止まった。
そして床に現れた陣も大きく広がり、消えた。
見た目は特に変わっていないが、次の彼の攻撃を初めて見る者は驚くだろう。



「先にいかせてもらうぜ!"呪鎖"!!」



五条が素早く両方の手をアーロインに向けると、すでにアーロインの体には鎖が縛られていて、その鎖は五条の手にしっかりと握られていた。



「へぇ…呪鎖かぁ」



アーロインは鎖で縛られているのにも係わらず、笑みを浮かべながら五条の次の行動を待った。



「神殺にとってはこんな術どうってことないってか?ならこれでどうだ!……"炎撃"!!」



余裕な表情の神殺に一泡吹かせてやろうと思った五条は、持っていた鎖を左手にまとめて右手の人差し指と中指を揃えてアーロインに向けた。
"炎撃"の唱えと共に陣が現れて大きな火の玉を指先から放った。




ドオオォォン!!!!!




大きな火の玉は躱す暇など与えないぐらいのスピードでアーロインに向かっていき、第二訓練場は大きな爆発音と煙で一杯になった。



「やったのか…?」


「はい残念〜」


「…っ!?」



広がっていた煙は強い風により一気に消えてアーロインの傷一つない姿が現れた。
アーロインの体を縛っていた鎖も簡単に切ってしまった。



「ちょっとさー僕のこと舐め過ぎなんじゃない?呪鎖なんて一番弱い束縛術でしょ?」



確かに五条は簡易で力の消費の少ない"呪鎖"を使った。
試しに使ってみたものの、アーロインにとっては鎖は紐並みらしい。



「傷一つないみたいだけど、炎撃もそんなに効果なかった訳?」


「呪鎖よりは全然マシだよ。熱いなって思ったぐらい」



ニタリと笑みを浮かべた。
完全に五条を舐めている。
今まで少し離れて伺っていた瀬良も力の解放をしようとしたとき……



「あの!」



一人の少年の声に瀬良と五条、そしてアーロインも少年の声のする方を見た。
そこに立っていたのは藤本冬真だった。



「俺も戦いますっ!!」









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