BLACK END
□No.03
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どいつもこいつもみんな邪魔なんだよね
どうして僕の邪魔ばかりするのかな?
あ そうだ
"殺しちゃおう♪"
No.03 神殺
――
対妖魔破壊術師本部では、いつも通り忙しそうに行き来する対妖魔研究術師たち。
常に訓練を怠らない対妖魔対応兵士。
そして、少々暇そうな門番。
門番の仕事は本部を出入りする対妖魔破壊術師の確認など…安全な仕事の一つだ。
「すみません。警察の者なのですが…」
門番の前に現れたのは一人の男。彼の手には警察手帳…警察の方なのだろう。
「あ、はい。少々お待ち下さい」
門番は近くにあるデスクの上の資料を見た。…だが、資料には今日は警察の訪問という予定など書いていなかったのだ。
「あの、申し訳ございません。今回は警察の訪問という予定はないのですが…」
「…」
「訪問は間違いではないでしょうか…?」
門番は恐る恐る言ってみた。
「クククッ…アハハッ!だよねー簡単には通してはくれないよねーじゃあ…」
男の表情は笑顔から一気に冷たいものとなった。
不信を抱いた門番はすぐさま警報装置を押そうとしたが。
グサッッッ
「何しようとしてんのさ?」
「っ…ぐぁっ」
男の指先は鋭く尖り、門番の体を貫くほど長く伸びていた。
門番が倒れた拍子に当たった腕が警報装置を押した。
"緊急事態発生 何者かが侵入したもよう"
「チッ…まぁいいかな。これからご挨拶にでも行こうと思ったしねー」
男は門番から鋭く尖った指を抜き、ゆっくりと暗闇に姿を消していった。
ーー
先程まで召集をかけられていたため、多くの対妖魔破壊術師が本部に残っていた。
状況が掴めずに仲間達と話し合っているときに事態は起こった。
"緊急事態発生 何者かが侵入したもよう"
「「!!!」」
この警報が鳴り、辺りはパニック状態となってしまった。
なぜなら、主にこのような事態はマナリアの予知能力で予測ができたはずだ。なのに自分たちには知らせが入っていないのだ。
「なんだよ!一体どうなってるんだ!」
「侵入者ってどういうこと!?」
本来ならこのような事態が起きれば、すばやく行動に移さなくてはならない。しかし、彼らにはそのような考えも思いつかなかった。
そんな中、一人の男がその様子を見て先程まで本部長のレイヴンが立っていた場所に立ち、声を上げた。
「静まれ!!」
「ビクッ!!!」
「対妖魔破壊術師であるお前達が何を恐れている!」
「あ、あの人は…国家対妖魔破壊術師でもあり…第三部隊の隊長でもある…"瀬良空次"隊長…!?」
彼らが驚くのも無理はない。
"瀬良空次"
彼は、対妖魔破壊術師の更に上を行く存在である国家対妖魔破壊術師であり、日本の首都である東京を中心に関東地方を守る第三部隊の頂点に立つ隊長でもあるのだ。
その名を知らぬ者はいない。
「先程のこともあると思うが、お前達が冷静にならなくてはならない!あくまでも人類の代表だと思え!急な出来事にいつまでも焦っていては駄目だ!」
「そーそー瀬良ちゃんの言う通り。みんな!一旦落ち着きな!」
瀬良空次に近づきみんなに優しく呼びかけるもう一人の男。
彼の名は"五条悟"
彼も瀬良同様、国家対妖魔破壊術師であり、なかなかの腕の持ち主である。
瀬良とは同じ第三部隊でコンビを組んでいる。
「この事態を把握してる奴なんて誰もいないんだから、ここは瀬良ちゃんの指示にみんな従ってくれないかな?」
「「は、はいっっ!!」」
五条はみんなの返事を聞いて満足したのか、瀬良に視線を送り、後ろへと下がった。
五条からの視線を受け、瀬良は改めてみんなに目を配り口を開いた。
「マナリアの予知能力がないため、事態は予想を遥かに超えている。今回の侵入者は先程話していた神殺の一人として考えていいだろう」
瀬良の真剣な表情にこの場にいる者は息をのんだ。
無理もない。先程話していた神殺がすでにこの本部内にいるというのだ。
だが、みんなは冷静に瀬良の話に耳を傾ける。
「この場で俺と五条を中心に2つのチームを作り、みんなは分かれてもらう。その後、多くの犠牲者が出る前に俺達で止める!」
瀬良の話に何かを思い出したように五条は瀬良の隣に立ち、みんなを見回しながら口を開いた。
「あとさ、神殺は殺さずに確保して欲しいんだよね。一応これからのためになると思うし…でも!危険と判断した場合は構わないよ」
五条のみんなを安心させるような声に決心をしたのかみんなの瞳は強い意思を持ったものになっていた。
「それでは、これから緊急任務を遂行する!」
瀬良の言葉にみんなは頷いて瀬良と五条の後ろに着き、部屋の扉へと歩を進めた。
――
"緊急事態発生 何者かが侵入したもよう"
「!?」
「おや…随分と早いデスネ」
この緊急放送はレイヴンと秋夜の元にも伝わっていた。
レイヴンはあまり驚いてはいない様にも見える。
「おい、レイヴン!今の言葉はどういうことだ!神殺への注意は必要と言っていたがこんなにも早いなんて…お前はすでに知っていたのか!?」
秋夜はレイヴンの言葉を聞き、自分は驚いていたのだがすぐに声を荒げて問いただした。
「いやいや…まさかワタシにもこんなに早く来るなんて予想外でシタヨ」
「さっきの神殺の復活の話だってまだ途中だ!これからどうするつもりだ…レイヴンっ!」
レイヴンは少し笑みを浮かべながらも秋夜の質問には的確に答えた。
「今侵入した神殺は、ワタシが指揮をしなくとも他の方が対処してくれるでショウ。それに、秋夜サンはどうしても神殺の話が気になっているみたいなのデ…今からお話をしまショウ」
部屋に備わっている少し年代を感じるソファにレイヴンは座り、窓枠にいる秋夜にも向かいのソファに座るように手招きをする。
2つのソファの間にあるテーブルには、いつの間にか紅茶の入ったティーカップとお菓子が置かれていた。
「それでは少し昔話をしまショウカ…」
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