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□プラチナ
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「さて…どうする?お嬢ちゃんの行きたい所でいいが?」
 
誰がお嬢ちゃんだバカヤロウ。
この鈍感守護聖。女たらし。あほ。
 
頭の中で声に出せない文句を並べる。
ムスっとしたまま、俯いたゼフェルを心配そうに、オスカーは覗き込む。
完璧に油断していたゼフェルの目の前に、オスカーの顔が現れて、たまらず真っ赤になってしまう。

(今日は赤くなってばっかりだぜ…ちくしょー…)
 
「どうした?気分でも悪いのか?…なら、涼しい所に…」
 
そう言いつつ既にゼフェルの手を引いて、木陰に行こうとしているオスカー。
ゼフェルは慌ててオスカーの袖を掴むと、ブンブンと顔を横に振る。
頭の上でプラチナの髪が揺れる。
 
「大丈夫なのか?」
 
こくこくと頷く。
 
「そうか」
 
その様子にオスカーは安心したように、笑う。
とびっきり甘い笑顔。
ゼフェルはまた、真っ赤になってしまった。

(やべー…っ!…ああ、もうっなんだってんだよ!!)

その後また、我に返ってからブンブンと顔を振るゼフェル。
 
「お嬢ちゃんはかわいいな」
「っ!」
「表情がくるくる変わって見ててあきないよ」
 
(そりゃあ…悪かったな)
 
「さて、これからどうする?」
 
(どうするって……あ)
 
ふっと、視線を動かした先に写るもの。
 
「お嬢ちゃん?」
 
すっとゼフェルが指さした先。オスカーもそちらを向く。
 
「…あそこがいいのか?」
「ん」

少し意外そうにたずねるオスカーに、楽しそうに頷いてゼフェルは歩き出した。
その後ろからついてくるオスカーの気配を感じながら、小さく笑う。
 
(さぁて…どうなるか、楽しみだぜ。こうなったら、もうどうとでもなれってんだ。ばかやろー)



二人が向かった先は、メテオール・プレイス。
ここには有名なジェットコースターがあり、ゼフェルは一度でいいので乗ってみたかった。
二人の上空をゴォーっと音を立てて、コースターが走っていく。
それを見上げるゼフェルとオスカー。
ゼフェルは楽しそうに、オスカーは少しだけ笑顔が引きつっている。

「これに…乗るのか?」

こくりとうなずいてオスカーの腕を掴んで歩き出した。いつもなら絶対に無理だがこの格好なら鋼な守護聖だとは分からないだろう。
もうこうなったら、なるようになれである。
先を歩くゼフェルを見て、オスカーは苦笑しつつその腕に従ったのだった。


(かぁー!!面白かったぜ!乗ってみてよかった)

期待どおりだったことに満足するゼフェル。
それとは反対に、コースター類とは無縁のオスカーは少しだけ辛そうにしている。

「大丈夫だ。でも、ちょっとだけ休んでもいいかな?」

ゼフェルが頷くのを確認すると、オスカーはにっこり微笑んでベンチへと向かう。
その様子を見てゼフェルはベンチとは別の方向へと走っていった。
そこには移動式の屋台があり、二人分のミネラルウォーターを買うとオスカーのいるベンチへと向かう。
ベンチで座っているオスカーに買ってきたうちの一つを渡すと自分も隣に座る。

「ありがとう。やさしいな、お嬢ちゃんは」

極上の笑みを返され、すっと頬を撫でられる。

その笑顔に見とれてしまい、ゼフェルは動けなくなってしまった。
それからしばらく、ベンチで休んでいた二人。

「さて、そろそろ移動しよう。お嬢ちゃんが買ってきてくれた水のおかげで気分もよくなったよ。次は俺が行きたい所に案内していいかな?」

すっと立ち上がりオスカーがゼフェルの手をとる。
それに逆らうことなくゼフェルは立ちあがる。

「それじゃあ、行こうか」

そのまま歩き出してしまい、ゼフェルはあせってしまった。だって、手をつないだままなのだ。
引っ張ってみるがオスカーは手を離してはくれない。
仕方なく、少しだけ俯いてゼフェルは歩く。

(これじゃあ、さっきと逆じゃねぇか…)

と思いながら。


オスカーにつれてこられたのは森の湖。
静かでただ水の音だけが響く場所。

「ここは静かでいいところなんだ」

手を握って少しだけ先を行くオスカーの背中をゼフェルは見つめながら歩く。

「お嬢ちゃんもきっと気に入ると思う」

(…そりゃあ、知ってる場所だしな)

どうしてオスカーはここに連れて来たのだろう。

(そういや、ここで告られたよな…)

この場所で愛を誓い合った恋人は永遠に結ばれる―そういう話をオスカーから聞いたことがある。
オスカーがそういうつもりで「今」の自分を連れてきたのだとしたら。

(……なんだか…いやだな…)

このままここで正体を明かしてしまおうか……。

「お嬢ちゃんには言ってなかったが、俺には恋人がいてな」
「っ」
「少しだけ素直じゃないんだが、とってもかわいいくてやさしい子なんだ」

いきなり何を言い出すんだろうか。
オスカーの真意が分からなくてゼフェルはあせる。

「この場所で愛を誓いあった恋人同士は永遠の愛で結ばれる、という伝説がある」
「…へ?」

下を向いていたゼフェルは急に自分の体に回された腕に驚く。

「だから、この場所でもう一度愛を誓おうかと思って連れて来た」
「……っ」
「な、ゼフェル」

名前を呼ばれて時間が止まった気がした。
それは愛の告白にびっくりしたわけでも、オスカーの笑顔にトキメイわけでもない。

(こいつ…やっぱり分かってたんじゃねぇーかっ!!)

そうだ。
最初から全部全部分かっててこいつは楽しんでやかったんだ!
せっかくここまで無口を貫き通したのに馬鹿みたいだ。

「…知ってやがったな…。ってか気づいてたな…何でいわねぇーんだよ!むしろ分かってたんなら止めろよ!」
「仕方ないだろう?かわいかったんだから」
「かわいくねぇ!。普通男が…じょ…じゃねぇ、こんな格好してたら普通は気持ち悪いってとめるだろうがよぉー!」
「いや、だから、ついかわいくて一緒に歩きたいなぁとおもってな」

笑顔のオスカーの足をゼフェルはげしっと蹴りつける。
その反動でふわりとスカートがゆれた。

「だああああっ!もういやだあ、脱ぎてぇ!!脱がせろーーー!!」
「ほらほら、騒ぐな。せっかくの静かな夜なんだ。な?」
「な?じゃねぇー!!おらっさっさとオリヴィエの所に殴りこみだぁーー!」

もはや、恥ずかしくてゼフェルは涙声で叫んでしまう。

「落ち着けゼフェル」
「くそーっー!」
「ゼフェル」
「なんだよっ!」

ちゅっ。

キスされた。

「………んなっ!」
「よし。落ち着いたな」
「落ち着いてねぇよ!どっちかというとびっくりなんだよ!」
「そうか」

叫ぶゼフェルにオスカーはまったく動じることはなく、いまだに涙目のゼフェルの頭を撫でると自分のほうへと引き寄せた。

「うううっ」
「うん。やっぱりかわいい」
「…オスカーぁ!」
「分かった分かった。今から行こうな」

(俺も早くいつものゼフェルに逢いたいからな)

まだ文句を言い足りないゼフェルの肩を抱き寄せながら歩き出す。



やっとゼフェルの騒がしい日が終わろうとしている…のかもしれない。



fin
…………………………………
凪さんのリクエスト「女装でオスゼ」でした。
む…難しいっすね!女装っ!
女装というかこういう関係はどうしてもオリヴィエ様の天下だと思うので登場していただきました。
頭の中で考えてるのを文章にするのは毎回毎回苦労するんですが、やっぱり苦労しつつ楽しかったです。
しかし…女装ネタかける人…すごいと思った。うん。私が書くとかわいさが伝わらないこと確実ですね☆←
凪さん、お待たせした上に長くてすみません(ジャンピング土下座!)
しかも長くてすみませんすみません!!
リクエストありがとうございました!



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