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□林檎とメカとそれから君
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「あ、オスカー様!」
うららかな日曜の午後。
オスカーは遠乗りに出掛けようとしていた。
向こうから、歩いてきていたランディに声をかけられる。
「どうした、坊や」
「坊やじゃないです!って、それはともかく、あの」
「何だ?」
「ゼフェル知りませんか?」
「いや…見ていないが」
昨日はオスカーの私邸に泊まりに来ていたが、新作のメカの調整に忙しく相手にされなかった。
しかも、一緒に寝るには寝たのだが朝起きたらすでに隣にいなかったのだ。
その時の心情と来たら。
なんとなくむなしい。
そんなわけで、ゼフェルに振られたオスカーは一人寂しく聖地の草原にでも遠乗りに出掛けようとしていた。
もしかしたら、ゼフェルに逢えるかもという、淡い期待を胸に抱いて。
「オスカー様の所でもないなら、どこ行ったんだ…あいつ」
「いないのか?」
「はい。あいつはしかたないなぁ…。わかりました。ありがとうございます。すみません、呼び止めてしまって」
「いいさ。それじゃあな」
「はい。それじゃあ、失礼します!」
言うが早いか、駆け出していってしまった。
その様子に「元気な奴だ」と笑ってから、オスカーも出発した。
聖地の森はいつもと同じく静かで穏やかだった。
いつもと変わらない景色に、オスカーの暗い気持ちを少しは和らげてくれる。
「あいつは今頃何をしているのか…?」
考えるのは、どこにいるのかわからないゼフェルのことばかり。
また、メカをいじっているのか…。
昼寝でもしているのか…。
ゼフェルに出会う前の自分ならこんなにいろいろと考えなかっただろう。
どうして、ここまでの好きになってしまったのだろう。
でも、それはそれでいいかもしれない。
この気持ちは嫌いじゃない。
しかし、考えるのに夢中になっていたオスカーはあることに気がつかなかった。
「っ」
ごつんと音を立てて頭に落ちてきたものを見てみれば、それは紅いリンゴ。
「なーにやってんだよ?考え事かぁ?」
その声にばっと勢いよく上を見てみれば、ゼフェルが笑顔で木の枝の上に座って、ぶらぶらと足を揺らしていた。
どうやら、この木の登っていて下を歩くオスカーを見つけたらしい。
「よぉ」
「ゼフェル…!そこでなにをしているんだ?」
落ちたら危ないぞ。
リンゴをぶつけられたことよりもゼフェルに出会えたことのほうが勝っていた。
「ん?ああ、コレ」
ゼフェルはひとつ口笛を吹く。
すると、どこからともなく、二つの影が降りてきた。
ひとつは、ゼフェルの座る枝の上に。もうひとつはゼフェルの肩の上に。
鳥の形をした二つのメカ。二つともゼフェルの大切なメカだ。
「メカ・イーグルとメカ…チュピの実験してたんだよ」
「実験?」
「この2体が一緒に飛んでたらおもしれぇと思ってさ。昨日の夜に思いついたんで、急いで相手の場所を感知してぶつからない様に設定して…。んで、今試運転中」
楽しそうに笑うゼフェル。
その調整のおかげで昨日は相手をしてもらえなかったわけだが。
「それで、上手くいきそうか?」
「ああ!もちろん。オレの計算に狂いはねぇ…といいたところだが、まだ少し調整が必要なんだよ。だから、今から帰って…うぉ?」
ゼフェルは枝から降りようと立ち上がった。
しかし、体勢を崩してずるりと足を滑らせてしまう。
「わわわっ!」
「ゼフェル!」
地面にぶつかる衝撃に耐えようとしていたゼフェルだが、いっこうにその気配がない。
下には柔らかい感触。
恐る恐る、瞳を開けると、そこには、心配げに見つめるアイスブルーの瞳。
「大丈夫か?」
「…へ?……ああ。へーき」
どうやら、オスカーが馬上で受け止めてくれたらしい。
おかげでケガはなさそうだ。
「痛いところは?」
「ねぇ…けど。オスカーは?」
「俺は大丈夫だ。鍛えてるからな」
得意げに片目をつぶってみせるオスカーにゼフェルは苦笑する。
その後、自分の格好にはっと気がついてあたふたするゼフェルに、今度はオスカーが苦笑した。
落ち着けるために、とりあえず、唇に小さくキス。
「…ゼフェル、これから草原まで行くんだが…お前もどうだ?」
「んー…。今日は無理。こいつら仕上げたいし」
「そうか」
せっかく逢えたと思ったんだがな…。
残念そうなオスカーの顔を見たゼフェルは、オスカーの襟元をぐいっと引っ張った。
そして、今度はゼフェルからオスカーの額にキス。
それもすぐに離れてしまい、ゼフェルはオスカーの腕の中で俯く。
驚いたオスカーは、そんなゼフェルの顔を見ようとすぐに覗き込むが、伸びてきたゼフェルの手に阻まれてしまった。
「ゼ…ゼフェル」
恥ずかしかったのか耳まで真っ赤にしたゼフェルはすとんっと馬から下りると、森の出口のほうへと走っていってしまった。
「……………」
オスカーは咄嗟に伸ばした手をどうしようかと、見る。
「逃げられた…な。…ん?」
しばらくゼフェルの走り去った方向を見ていると、今度はまたゼフェルが走って戻ってきた。
それでも、俯いたままでオスカーを見ようとしない。
「どうかしたか?」
「夜」
「ん?」
「夜!あ…相手してやるから!それまで待ってろ!」
そう言うが早いか、またゼフェルは走り去る。
今度は口笛を吹いて、二つのメカを呼ぶのを忘れずに。
驚くオスカーの上空を二つのメカが風をきって、主の下へと飛んでいく。
「…ははは。参った…!」
残されたオスカーは額を押える。
その表情は嬉しそうな笑顔。
「夜…か。楽しみだ」
晴れ晴れとした表情でオスカーは馬を走らせる。
これからのことを思いながら
FIN
……………………………………
まきさんのリクエストで「振り回されるオスカー」でした。
あら?振り回して…ない!!!
あああ、すみませんすみません(泣)オスカーが振り回すのにはなれているのですが、逆の立場はなんと難しいことか…と知った次第です。
おお、難しいねw
メカ’Sはただの趣味です。
好きなんです。あの子らが…。
リクエストありごとうございました!
お待たせして申し訳ないです。
※ヒット報告をしてくださった方がお二人いらっしゃいましたので、お二人それぞれののリクエストを書かせていただいております。
確認はしてないのですが、おそらくフォレストのカウンター表示のエラーだと思われます。※