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□Happening
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その日はついてなかった。
遅刻して、首座の守護聖には長々と説教をもらい、昼寝しようとすればランディに邪魔をされ、挙句、オスカーとは小さなことから大喧嘩になり。
いろいろとむしゃくしゃして、聖地を抜け出して一人で酒を煽っていのがほんの一時間ほど前。
しかし、喧嘩っ早い性格と口の悪さが災いして、からんで来たチンピラと喧嘩になった。
ゼフェルは相手に一発お見舞いして、そこを去ろうとしたのが。
どうやら、うまく急所にはまってしまったらしい。
あまりの痛さに相手の男はもんどりうち、取り巻きにゼフェルを捕まえろと命令した。
その後は、見つからないように暗い路地裏を走り回っていただ。
遠くから、ゼフェルを探す声が聞こえている。
捕まればただではすまない事は目に見えている。
なんとしても捕まらずに町の入り口までたどり着かなければならない。
「ちくしょー…。ついてねぇぜ…。全くよぉ」
文句を言っても自分で巻いた種だ。
誰にも頼ることはできない。
ずるずると座り込んで、汗で張り付いた前髪をかきあげる。
「…オスカーのばかやろー」
ここにはいないオスカーに八つ当たりをする。
オスカーとの喧嘩だけでも憂鬱な気分なのに、今はもうひとつ問題を抱えてしまった。
無事に帰りついたら真っ先にオスカーの私邸に行って、どうにかしようとゼフェルは思った。
「よし…いくか」
ゆっくりと立ち上がって、少しだけ路地から顔を出す。
相手はこちらを見つけては無いようだ。だが、確実にゼフェルの方へと近づいてきてはいる。
今だっ!とゼフェルは勢いよく走り出した。
しばらく走ると大通りにでた。
「聖地に帰るには…こっちかっ!」
目的の方向へと走り出そうとしたときだ。
パァァン…っ。
「っあ…っ!」
左足に熱さ。そして、次には痛みが走った。
バランスを崩して、ゼフェルは道に倒れこんだ。
「……っ!あ…くっ…」
痛みに朦朧とするゼフェルが最後に見たのは、自分を見下ろす下卑た笑みだった。
「…うぅ」
冷たさと痛みでゼフェルは目を覚ました。
「お目覚めか?」
聞こえてきたのは、知らない誰かの声。
ゆるゆると顔を上げる。
ちゃりっと音がして、思わず見上げると腕を鎖で吊り上げられていた。
「………げ」
目の前にはさっきまで自分を追いかけていた連中とは別の人間がいた。
「俺の仲間がお前にさんざんとお世話になったそうだな」
「…別に…世話した覚えなんてねぇよ…んだよ、おめー」
「あいつらのボスだが?」
「サル山のボスってか…おにあ…あぅっ!」
途端に打たれたところが強く痛んだ。
申し訳程度に止血してある傷口を力いっぱい握られたのだ。
「口の利き方には気をつけることだな。坊や」
「てめぇ、…なんぞに、坊やっていわれたく…は、ねぇんだよ、ボケが」
痛みに耐えつつ、ぎりりと目の前の男を睨み付ける。
「これはこれは」
放れていく手に思わず息をつく、しかし、髪を捕まれ顔を持ち上げられた。
「ぐっ」
「この状態でもまだそういう口を聞けるか。あいつを殴りつけて怒らせる事だけはあるな。あれでも、うちのグループでは力は上のほうなんだが」
タバコに火をつけながら男はくくっと笑う。
ゼフェルはその顔に嫌悪を覚えつつ、また相手を睨み付ける。
そんなゼフェルの視線も意味が無かった。
「いい目だな。それに」
乱暴に髪から手を離される。
ちゃりっと鎖がゆれた。
「っは…っ」
「銀髪、紅目に褐色の肌か…。なるほどな…そそる組み合わせだ。お前、あいつらにケツでも貸せと言われたか?あそこにいたのだって夜の相手が欲しかったからじゃないのか?」
明らかに侮辱されてゼフェルは怒りに震える。
この男は自分をなんだと思っているのか。
どうして、こんな男に言われなければならないのか…。
しかし、怒ってもこの男には効果はないと思いとどまり、ぐっと唇かんで耐えた。
「………俺が相手を探していただ?…そんなモンは探してもねぇし、合ったとしても、おめぇらごときが触るには俺の体はもったいねぇんだよ!」
「これはこれはプライドが高いな。それでこそ…楽しめそうだ」
タバコの煙がゼフェルへと吐き出される。
「っ!げほっ…!!なにを…」
たまらずむせかえるゼフェルに男は体を近づけ自身の足をゼフェルの足の間に滑り込ませた。
「やめろっ!変態ヤロー!」
「痛い目を見たくなかったら大人しくする事だな」
必死に抵抗するが、体の自由を奪われているために、うまく動くことができない。
ゼフェルが抵抗できない事をいい事に、男はゼフェルのシャツのボタンに手を掛け一気にシャツを破いた。
からからとはじけたボタンが転がる。
「いやだ!やめろっ!やめろっっっっ!!!!」
何とか男から離れようとゼフェルは渾身の力で抵抗する。
いやだ!嫌だっ!!
俺に、俺に、触れていいのは…あいつだけなんだ!
「俺に、さわるなぁつ!!!ぐっっ」
あまりの抵抗するゼフェルに舌打ちをすると、男はゼフェルの首を片手でつかんだ。
「大人しくする事だな。どうせ助けなんてきやしない」
ぎりぎりと、首を閉められていく苦しさと悔しさに涙がでる。
オスカー……オスカー…。
苦しさの中で浮かぶあの蒼と赤。
オスカー…っ!!
「ぐっぁぁ!」
ゼフェルの目の前にいた男が悲鳴を上げる。
「…!」
先ほどまで余裕の表情だった男の顔からはその表情は消えていた。
その左の肩から、赤い血が流れ、傷口から見えるのは銀色の剣先。
「こいつに手を出すとは…いい度胸だ」
静かに声が響く。
待ち焦がれていた、でもここに来るはずはないと思っていた声。
驚いているゼフェルの目の前で男が横になぎ払われ、無様な声をあげて床に転がり落ちた。
「…げほっ…ごほっげほ…」
閉められていた器官に空気が入ってきてたまらず咽る。
苦しげにゆれる背中に、そっと添えられる暖かい手の感触。
その手は優しかった。
「大丈夫か…?ゼフェル。遅くなってすまなかったな」
「オ…オスカー?」
「ああ、俺だ」
「オスカー…」
声を聞いて名前を呼ばれて、そして、その名を呼ぶだけで心が救われる。
でも、どうしてここにオスカーが来てくれたのだろう?
質問しようとすると、「少し待て」と言われ、次の瞬間がくりと腕が落ちた。
どうやら、鎖を切ってくれたらしい。
暴れたせいで手首はすれ、力が入らない。
「さんきゅ」
オスカーへと礼を言って笑いかけると、途端にぎゅっと抱きしめられた。
「オスカー…」
ゼフェルの呼ぶ声に優しく微笑むと、すっと放れる。
「話は後だ。行こうゼフェル」
「お…おう…」
立ち上がろうとしたゼフェルの体はぐらりと揺れて、オスカーへと倒れ掛かってしまう。
どうやら、腰が抜けたらしい。
それに、左足に力が入らない。
「あ、足…」
「足を怪我しているのか。気がつかなくて、すまない」
オスカーは軽々とゼフェルの体を抱えあげて横抱きにした。
「へ?うあっ!」
驚いているゼフェルの額にキスをしてオスカーは歩き出す。
早くここからゼフェルを連れだして、医者に見せなければならない。
部屋を出る寸前、オスカーは部屋の中で転がりこちらに憎しみの視線を送っている相手を見る。
その瞳にはゼフェルには見せることの無い怒りが燃えていた。
それでも、何をするわけでもなくオスカーはゼフェルを抱えて部屋を出た。
その後のことをゼフェルは覚えていない。
オスカーに運ばれている途中で、気を失ったらしい。
目が覚めたとき、最初に視界に入ったのは、自分を覗き込んでいたオスカーの顔で。
「あ?」
「ゼフェル?」
驚いて勢いよく起き上がるが、途端に体に走る痛み。
「いってぇぇぇ!」
「おいおい。お前、左足打たれてるんだからな。気をつけろ」
そうだった。
「忘れてた…」
「全くお前は」
苦笑されて、ゼフェルは黙り込む。
「どうした?」
「…えっと、……………今回は悪かったな…すんげーえ、迷惑かけて…さ」
「そうだな…しかし、お前が本当に無事でよかった。それだけが救いだったさ」
「でも、どうして、俺の居場所…」
「ああ、その事か。実はなバーのマスターに聞いたんだ」
聖地にゼフェルがいないとわかったオスカーは、サクリアを追ってすぐにあの町についた。
そして、ゼフェルが入りそうなバーを探し、マスターに話を聞き、あの連中のアジト大体のアジトの場所も聞き出しすぐに助けに向かったのだ。
「あの連中は町でも悪名高く、犯罪のほとんどに加担しているといわれていたそうだ」
ゼフェルの髪を撫でながらオスカーは話す。
「お前を助けることが目的だったから、あの後どうなったのかは知らないがな」
「別に知りたくもねぇ…」
「だろうな」
髪を撫でてくれるオスカーの手が気持ちいい。
「オスカー…今回のことジュリアスには…?」
「ん?報告したらお前、金輪際外出できなくなるぞ?」
「げ…それは勘弁」
「なんとかバレないようにはしてやるから。俺に任せて今は眠れ。いいな?」
「う…ん…」
深く息をついてゼフェルの体がベットに沈み込む。
「お休み。ゼフェル」
やさしく額にキスをすると、ゼフェルは小さく微笑むと穏やかに眠り始めた。
オスカーもその様子に微笑む。
「…本当に無事でよかった…」
オスカーはいつもまでも、安らかに眠るゼフェルを見守り続けた。
ゼフェルが起きて、オスカーに照れながら「おはよう」というその時まで。
FIN
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青漣さんのリクエスト「ゼフェルのピンチにオスカーが助けに来る」でした。
きっと、オスカーは世界の果てでも助けにくるでしょう!そういう男ですからw
ピンチ感が出せていればいいのですが…。
だって、いつもお気楽を書いてる人間ですからね〜。ゼフェルとオスカー以外のの第三者しかも、オリジナルがこんなに難しいことを再確認いたしました←おいこら。
お待たせして申し訳ありませんでした!
リクエストありがとうございましたw
※5500ヒット報告をしてくださった方がお二人いらっしゃいましたので、お二人それぞれののリクエストを書かせていただいております。
確認はしてないのですが、おそらくフォレストのカウンター表示のエラーだと思われます。※