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□4人のテーブル
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「ゼフェル、なんて言ったらいい覚えているな?」
「うん!えっと…きょうはおまねきいただ、き、まして、ありがとうございますぅっ!」
「そう。よくできました」

夜の町を礼服姿のオスカーとゼフェルが歩いていた。
オスカーの腕には一本のワインボトル。
ゼフェルは、いつも着慣れないような服に少しだけ窮屈そうだった。


今日は、ジュリアス宅で、オスカーとゼフェルそして、ジュリアスとランディだけの小さなパーティ。
ランディがこの町に来てちょうど、一年がたった。
そこで、ジュリアスとオスカーとで相談して、4人で小さなパーティを開くことにしたのだ。

「ありおす、おるすばんさみしくないかな?」
「大丈夫だろう。たぶん今頃、ぐっすり眠っているさ」
「そだね!えへへ…とってもたのしみ!」

町の中心部にジュリアスの館はある。
入り口へと近づいていくと、扉があいて館の執事が二人を出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。オスカー様、ゼフェル様」
「ああ。お二人は?」
「中でお待ちです」
「こんばんは!」

ゼフェルが元気よく挨拶すると執事も微笑みながら「こんばんは」と返す。

「それでは、ご案内いたします」
「頼む」

執事を先頭に館の中へと二人は進む。
広いエントランスを抜け、案内された部屋にすでにランディとジュリアスの姿があった。

「ゼフェル!オスカーさま!」
「らんでぃ!」

ゼフェルはランディへと駆け寄ると、ぴたりととまった。
その様子にランディは首をかしげる。

「えっと……きょうは、おまねきいただきありがとう、ご、ごじゃいます!」
「あ…えっと、ご、ごていねいにありがとう、ございます!」

二人ともなぜか赤い顔になりながら挨拶している姿に、大人二人は顔を見合わせて微笑む。

「ジュリアス様、今日はお招きいただきましてありがとうございます。ゼフェルともども楽しませていただきます」
「ああ。今日はよろこばしい日だ。二人とも楽しんでいくといい」
「はっ」

頭上で交わされる大人の挨拶を、子供二人は見上げる。

「おすかーかっこいいね」
「ジュリアスさまだって、かっこいいよ」


そのあとは、テーブルへと案内される。

「それでは…乾杯」
「カンパーイ!」
「乾杯」
「かんにゃーい!」

ジュリアスの乾杯の合図で4人だけの小さなパーティは始まった。

「おいしぃぃ!」

運ばれてきた料理は、どれも完璧な味付けで、見た目味ともに4人を満足させるものだった。
ランディとゼフェルはおいしいおししいと言いながら、ぱくぱくと食べ進み、ジュリアスとオスカーは、オスカーが持ってきたワインを飲みながら、食事をする。
会話は、ゼフェルとランディのことから、仕事の話。前に言った町での、出来事など。
時々二人の会話にゼフェルとランディが入ってきて、相槌を打ちつつ。
会話の途中でちらりとゼフェルを見たオスカーは、ゼフェルの口の周りがソースで汚れていることに気がつくと、そっとそれを拭く。

「ありあと!おすかー」
「どういたしまして。そういえば、ランディはここに来たときよりも成長したんじゃないか?」
「……?そうですか??ジュリアスさま」
「そうだな…。身長も伸びたのではないか?やはり成長中であろうからな。こんどエルンストのところにでも、調べてもらいに行くとしよう」
「……らんでぃ。ちょっといすおりて?」
「なんで?」
「いいから」

くいっとランディの服をひっぱってゼフェルが椅子から降りる。
ランディもわからずゼフェルと一緒に、椅子から降りた。

「おすかー、おすかー、ぜふぇるとらんでぃどっちがせいちょーしてるか、わかる?」
「そなた達、食事中だぞ」
「だって、きになるもん!」

ぷぅっと膨れながらゼフェルはジュリアスを見た。

「ジュリアスさま…オレもちょっと…きになるんですケド…だめですか?」
「ジュリアス様、少し面白そうじゃないですか。ふむ…成長…か…。よし。二人とも背中と背中を合わせてごらん?」

オスカーも席を立ち、二人に後ろを向かせて、背中合わせにする。
結局ジュリアスも様子を見守るため立ち上がる。

「う?」
「こうですか?」

それはつまり背中と背中を合わせて、身長を図るというものである。

「……これは」
「そうですね」
「ねぇねぇ!どっち??」
「どっちですか?」

紅い瞳と空色の瞳が見つめてくる。

「ランディのほうが身長が高いな」
「ほんとですか!」
「ああ」
「やった!」

喜んでいるランディの反面。

「ゼフェル?」
「ぜふぇるのほうがたいもん」
「おい、ゼフェ…」
「ぜふぇるがらんでぃにまけるはずないもん!」

びしっ!と宣言するゼフェル。

「だって、オレのほうがゼフェルよりおおきかったんだよ?」
「それは、たまたまだもん!」
「ちがうよ。オレのほうがたかいの!」
「ぜふぇるのほうがおみみいれたら、たかいもん!」
「そんなのずるいよ!ゼフェルのズルっこ!」
「ずるっこじゃないもん!!!」
「ズルっこだよ!だいたいみみはしんちょうにいれないの!」
「ぜふぇるはいれるの!らんでぃのばかーーーぁ!」
「だから、バカじゃないっばっ」

和やかだったパーティは、一転して二人の喧嘩に包まれてしまった。

「まったく…この者たちは…仲が悪いのかいいのかわからぬな」

はぁと、頭を抱えるジュリアス。

「とめますか?」
「いや…このくらいの年の子供は同年代の友と喧嘩をして、成長すると昔聞いたことがある」
「そうですね。昔から『喧嘩するほど仲がいい』といいます。それにしても、ここ一年で、ランディは明るくなりましたね。前は少し、無理をしているような感じでしたので気になっていたのですが」
「ランディは故郷を一人離れて私の元に来た。やはりさみしかったのであろうな」

ジュリアスとオスカーの二人はまだ、喧嘩を続けている二人を見ながらやさしく微笑みあった。

「さて、そろそろ。とめましょうか」
「そうだな…」

いまだに言い合っているゼフェルとランディ。

「ほら、二人ともやめないか」
「にゅっ!」
「うあっ!」

ぽんと二人の頭に手を乗せるオスカー。
二人はびっくりして、大声を上げてしまう。どうやら、喧嘩に夢中で近づいてくるオスカーに気づいていなかったらしい。

「今日楽しいパーティなんだから、喧嘩しちゃったら楽しくなくなるだろう?」
「…うー…」
「………」

ゼフェルは服のすそを両手でギュッと握ってうつむいてしまった。ランディはジュリアスのほうを見ている。
ジュリアスはただ何も言わずに、ランディを見つめていた。
ランディはゼフェルのほうを向くと、口をひらいた。

「ごめん…ゼフェル」
「………」
「ごめん…ね」

ゼフェルは唇を尖らして、ランディから目線を外す。
そんなゼフェルにランディの瞳に涙が浮かんでしまった。

「ゼフェル」

オスカーに促されてランディを見たゼフェルは、またうつむいた。

「……ごめん……」

それでも、小さい声でゼフェルがあやまると、ランディの顔に笑顔が戻る。
そんな二人の頭をオスカーはぐりぐりとなでると、席へと戻っていく。もちろんその後にゼフェルも続く。
二人を見つめていたランディは、ジュリアスのズボンを小さく握った。

「オレ、ゼフェルがともだちでよかったです。ケンカするけど…」
「そうだな」
「それから、ここにいれてしあわせです。ありがとうございます!ジュリアスさま!」
「礼を言うのは私のほうだ」
「そうなんですか?」
「ああ」

ジュリアスの優しい笑顔に、ランディは嬉しそうに笑った。

「らんでぃー、はやくてーぶるこないとぜふぇるがぜーんぶたべちゃうよぉ」
「え!だめ!!」

楽しい時間をありがとう。
そして、これからもずっと楽しい時間を君をすごそう。


fin
………………
4500ヒットを踏んでくれた佐里さんのリクエストで「黒猫のゼフェルとランディとオスカー、ジュリアスでパーティ」でした。
リクエストの中にゼフェルとランディをケンカさせてほしいとあったので、ゼフェルといえば身長というわけで、身長ネタでケンカさせてみました。
どうでしょう?←どうでしょうってお前。
パーティをしてるシーンより、ケンカしてるシーンのほうが多いですが…。
気に入っていただけると嬉しいです。
リクエストありがとうございました!

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