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□女神はどちらに微笑むか
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「言葉にしないと伝わらないと思います」
優しげな声がきっぱりとそういった。
うららかな日の曜日の昼下がり。
周りの楽しげな様子とは対照的に真剣な表情の守護聖が、聖地の公園の噴水の前で二人、向かい合って話をしている。
一人は炎の守護聖オスカー。
そして、もう一人は、
「あの子は他人の事や物事には敏感なのですが、自分関係となると途端に鈍感になりますからね」
地の守護聖ルヴァ。
「それじゃあ、そろそろ行動に移したほうがよさそうだな…」
「そうですね。あ〜でも、私も貴方に負けないように、これまで散々いろいろしてきたんですけどねぇ。これでも、確実に貴方よりはゼフェルといる時間は長いですから」
少しだけ困ったようにルヴァは笑う。
しかし、その瞳が笑っていない事はオスカーがよくわかっていた。
「ふっ。負ける気はないがな…とろこで、そろそろあいつが来る頃じゃないのか?」
「ええ。この噴水前に…ああ、来ましたよ」
ルヴァの見つめる方向から、銀髪を風に揺らして走ってくる少年の姿が。
それはいままで二人が話題にしていた人物、鋼の守護聖ゼフェル。
そして、二人の思い人。
それぞれのゼフェルへの思いを知った時から本人の知らない所でこの二人の戦いは静かに静かに始まった。
それは、本当に静かで。
誰も気がつかない。
中心人物であるゼフェル自身も。
時には協力し合い、時には相手を出し抜いてオスカーとルヴァの勝負は続く。

「よぉ。あれ?二人とも早くねぇ?」
二人を見上げながら首をかしげるゼフェル。
ゼフェルにしては珍しく待ち合わせの時間には間に合うように来たのだ。
上目遣いで小首をかしげるその姿をかわいいと二人は思った。
でも、そんな事を顔に出す二人ではないのだ。
「まぁな、たまたま早かっただけだ」
ニッコリと笑うオスカーに、
「そうですよぉ。ゼフェル。貴方も珍しく早いじゃないですか〜」
いつものように話しかけるルヴァ。
「そうだな、いつもは遅刻ぎりぎりなのにな」
「う…うるさいっ!…ほら、さっさと行こうぜ。おめぇら二人分の買い物終わらせなきゃなんねぇんだからなっ!」

そう、うららかな日の曜日の昼下がり。3人の守護聖が揃って集まった理由。

今日は「3」人でデート(仮)。



「そういや、二人は何を買うんだよ?」
ゼフェルを真ん中に挟んで歩き出す。
間でゼフェルが交互に二人の顔を見ながら話し始めた。
「私は、実はお茶の葉ですねぇ」
「お茶の葉?どんな?」
「ああ、いつも飲んでるあの緑色の茶のことか。確か、緑茶だったか…」
「ええ」
「なんで、オスカーがルヴァの好きな飲み物知ってるんだ?」
「えっ!」
「オスカーとルヴァってそんなに仲良かったっけ?」
「いや…。たまたまルヴァの執務室にいったら飲んでた所に遭遇してな」
じっと赤い瞳に見られて、なんとなくオスカーは瞳をそらす。
真相はゼフェルのことについて語り合っていた場所が断然ルヴァの執務室が多かったという話だ。
「へぇ…」
ちろりとゼフェルを見ると、なんとなく面白くないという顔をしている。
これは脈ありかと、内心、オスカーは期待する。
オスカーとお茶をしていたルヴァに嫉妬しているのか、ルヴァとお茶していたオスカーに嫉妬しているのか…。
(前者ならいいが後者はまずいな…)
実はルヴァも同じ事を考えていたりするのだが。
「…オスカーは?」
急に話を振られたオスカーは笑顔で答える。
「俺は壊れていた時計が修理できたという連絡があってな、それを受け取りにだ」
「んだよ、壊れたなら俺のところに持って来たら直してやったのによ」
「丁度、出先で壊れちゃったんですよねぇ〜」
のほほんとルヴァが答える。
セレスティアのカフェでお茶(という名の作戦会議)をしているときに壊れたオスカーの腕時計。
「ああ、それでな」
その後、しまったと顔を見合わせてオスカーとルヴァはゼフェルを見た。
すると、そこには予想通りに、少しだけむすっとしたゼフェルがいた。
「あの、ゼフェル〜?」
「…んだよ」
なんとなく声まで不機嫌だ。
オスカーとルヴァはまた顔を見合わせた。
「ゼフェルは何を買う予定何だ?」
「俺?」
顔を上げたゼフェルに二人は頷く。
「…えっとな…メカに使う部品の新製品、やっと入ったって連絡入ってそれ買いに行くんだ」
「そうなのか…。それをつけると何か違うのか?」
「全然っ!今の性能の半分は向上するぜっ。この俺が言うんだら間違いねぇっ!」
楽しそうに笑うゼフェル。
メカの話をするとき、ゼフェルは本当楽しそうに笑う。
その笑顔を見るのが二人は大好きだった。
「そうですか〜。だったら完成したら見せていただけますか?」
「おうっ。オスカーにも見せてやるからな」
「ああ。楽しみにしてるよ」

セレスティアの入り口に着くとすぐゼフェルは近くにあった露店へと走っていってしまう。
「ルヴァ」
「なんでしょうか?」
「さっきのアレはどちらかに脈ありだと思っていいのか?」
「そうかもしれませんねぇ」
ふっとどちらからともなく笑いがもれる。
「あの子の気持ちが分からない以上、まだまだ勝負は終わらなさそうですね」
「そんなにすんなりと勝負がついたら面白くないだろう?」
「ええ」

道の先でゼフェルが呼んでいる。
どちらに勝負の女神が微笑むのか。
緩やかに進んでいく三人の関係。まだまだ、勝負は付かない。


Fin
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本当に、お待たせしましたっ!(ジャンピング土下座)
そして、リクエストにそえてない気がして本当にもう分けないです…っ。手を組んだというか…静かなところで戦っててすみませんっ!
あわたわっ。どうぞ、煮て焼いてくださいっ。
リクエストありがとうございましたっ!


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