もう一人のドリームナージャ6(プレミンジャー公爵家の秘密編)

□第1章 プレミンジャー公爵
1ページ/2ページ


一人の男性が、大きな書斎で書類に目を通していた。男性は、初老で、少し髪に白髪がちらほらみられていた。これは、男性の今までの苦労の現れでもあった。男性は一通り、書類に目を通してから椅子にもたれかかった。
(このプレミンジャー公爵家を守っていくためにナージャは後継ぎとして必要不可欠だ。しかし、当の本人は貴族ではなく、旅芸人に戻ってしまった。)
彼は、このウィーンで1,2位を争う貴族の名門中の名門プレミンジャー公爵その本人だった。彼は、ナージャの母親コレットから無理やり赤ちゃんだったナージャを引き離した。これが、その時は最善策だと思いそうするしかなかった。しかし、いざ後継ぎ問題が浮上すると自分の息子ヘルマンの普段からの身勝手な振る舞いに嫌気がさし、後継ぎをナージャにしたほうがましだと思い、ナージャを探偵に探させた。ついにナージャを見つけたと思ったら、ヘルマンの仕立てた偽物の娘を一回は後継ぎにしてしまった。この時点で、プレミンジャー公爵が正当な跡取りを見極められなかったことに後から考えると腹が立った。幸運なことに本物のナージャが分かり、跡取りにすることを宣言できた。そのところまでは良かったのだが、そのあとナージャ本人から跡を継がないと宣言されてしまった。
「まったく何がよくて旅芸人なんてやっているんだ!」
プレミンジャー公爵は悪態をついた。彼にとって、家を守ることが一番の最優先事項なのだ。だから、ナージャがやっていることが理解出来なかった。ふと、プレミンジャー公爵はカギを取り出し、机の引き出しで厳重に保管させているものを取り出した。その箱は、とても古く、頑丈に作られていた。カギを開けるとそこには、光り輝くクリスタルが5つ並んでいた。プレミンジャー公爵は、大事そうに一つ一つを見る。しかし、以前あったはずの6つ目のクリスタルが置いてあったところを見てため息が出た。そのクリスタルは10年以上前に突然無くなってしまった。プレミンジャー公爵がどれほど悔やんだか。
「これは、何があっても守らないといけない。これはこの家の家宝なのだから。」
「ふーん、そうだったんだあ。」
どこからか声がしてプレミンジャー公爵が声のする方を向いた。そこには、一人の少年が立っていた。少年が、プレミンジャー公爵に歩み寄る。
「プレミンジャー公爵家が、なんで力がある貴族なのかその謎が分かったよ。そんなにクリスタルを持っていれば必然的にそうなるよね。」
「誰だ、おまえは?」
プレミンジャー公爵が聞くと、少年は自分が持っている灰色のクリスタルを見せびらかした。とたんにプレミンジャー公爵の顔が険しくなる。
「僕は、シャドウ・ジュエルの正当な契約者さ。」
そういうと、ニコッと笑って見せた。そして、プレミンジャー公爵が持っている箱を覗き込もうとした。とっさにプレミンジャー公爵は、箱を閉めた。少年が舌打ちした。
「隠すことないだろ。クリスタルのことを知っている者同士だし。」
少年が言うと、プレミンジャー公爵は、睨みつけた。
「分かったよ。でもね公爵さん、あなたその様子じゃどのクリスタルとも契約していないようだね。だって、契約していたら僕を攻撃するはずだからね。」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ