もう一人のドリームナージャ3(操られた貴公子編)

□第7章 薔薇の意味
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ダレンは、あれからどうマコと関わればいいのか分からなくなっていた。勝負のことなんてこの際どうでもよくなっている自分に気づいていた。
(マコレットの心が自分のほうに向いてくれればそれでいい。)
ダレンは、あれからマコのことしか考えられなくなっていた。自分があの少女に心奪われるなんて考えもしなかった。しかも、最悪なことに初めて会ったあの日、自分はイライラしていてあの店に怒鳴りこんでしまった。それをマコは見て軽蔑の眼差しで水をかけられた。この出会いからするに自分は彼女にとって一番嫌われていてもおかしくない。そう思うと、ダレンは肩を落とした。
「あーあ。俺はついてないな。よりによってこんな出会い方さえしなければ・・・。」
ダレンはマコの瞳と同じ色の空を見て言った。
(あの瞳が自分だけを見てくれることなどあるのだろうか・・・。)

そのころマコは、ピアノ調律をしていた。調律に必要な器具をダレンの父親から借りピアノの鍵盤ひとつひとつの音合わせを行っていた。
「この音やっぱり半音ずれてるよね。こっちも。」
マコは絶対音感を持っているため音のずれが分かる。小さい頃マコは、楽譜ではなく、音から曲を聞いて弾いていた。なので、知らないうちに絶対音感を身につけていた。絶対音感があるおかげで、ほとんどの曲を耳から聞いただけで弾けるようになっていた。
「うーん。けっこうこっちの音もずれてるな。しばらくこのピアノ使っていなかったのかな。」
マコが真剣に耳を当てながら調律しているとドアが開いた。マコが、振り向くとそこにダレンが立っていた。マコは、いつも通りに振舞おうとした。
「今、調律やっているのよ。ダレンこのピアノ最近使ってなかったでしょう。」
マコが普通に話しかけてくれたので、ダレンはほっとした。
「ああ。最近どころか母が亡くなってから弾いてないよ。もう8年近くなるかな。」
ダレンがピアノの鍵盤に触りながら言った。
「お母さん、8年前に亡くなったの?」
マコがダレンに聞くとダレンが、少し悲しそうな顔で言った。
「ああ。君と一緒でピアノがとてもうまくて、薔薇が大好きな人だった。父さんが薔薇園を大切に手入れしているのはそのせいさ。」
ダレンがあまりにも切なく話すので、マコは悪いことを聞いてしまったと思った。
「別に気にしなくていいよ。」
ダレンがマコの様子を察して言った。すると、マコは、ダレンが鍵盤を叩いていた右手を握った。
「マコレット?」
マコは、ダレンの目をまっすぐ見た。その瞳にダレンは吸い込まれる。
「じゃあ、お母さんとの大切な思いでのためにもピアノちゃんと調律するね。そしたら、毎日ピアノをダレンが弾いてあげてね。きっと、ダレンの側にお母さんずっといるんだから。私には分かるのよ。」
マコが笑顔でダレンに語り掛ける。ダレンは、そんな一生懸命に語りかけるマコを見てなんだかまた変な気持ちになった。
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