もう一人のドリームナージャ 1 (序章編)

□第2章 出会い
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色とりどりの店が軒をつられている。あっちこっちからいい匂いがいして少女は、お昼ご飯になにを食べようか迷ってしまっていた。
「あーあ、どれにしようかな?やっぱりイギリスにせっかくきたのだからフィッシュアンドチップスがいいかな。」
少女は、どうしようかと真剣に悩んでいた。
 その時、どこからか楽しい音楽が聞こえてきた。
(なんだろう?お祭りでもあるのかな?)
少女は、楽しい音楽につられていったんその場をあとにして、音楽が流れるほうに駆けだした。






ハローハローこんにちはイギリスのみなさん
ボンジュール ボンジュール・・・








音楽がしたほうにいくとそこには、からくり自動車があった。その周辺には多くの観客が今か今かとまっていた。少女の心は、はずんだ。
(こんなに胸が高鳴るなんて・・・)
期待に胸を躍らせていると、奥から大きな男が出てきて叫んだ。
「みなさんおまたせしました。夢と希望をのせてきました。ダンデライオン一座!!
まず最初の演目は、わがダンデライオン一座が誇る奇跡の舞姫ナージャ嬢でーす!!」
すると今度は、プラチナブロンドの髪をした青い瞳の女の子がやってきた。ナージャと呼ばれた少女は、観客に満面の笑みを見せると楽しい音楽に合わせてバレーを踊りだした。その姿は、愛らしく、可憐で、つい誰もが見とれてしまうほどだった。少女も例外ではなかった。
(なんて、楽しそうにダンスをおどるのだろう・・・。)
少女は、ナージャを観てそう思ってしまうほど、ナージャは、楽しそうにダンスをおどっている。
少女は、一目見て彼女のことが好きになった。まだ話したこともないのに・・・。





音楽が止まり、大男が出てきた。
「以上ナージャ嬢の奇跡のダンスでしたー。」
その瞬間人々が拍手喝采をした。もちろん少女も、割れんばかりの拍手をこの奇跡の舞姫に送った。
(すごい!ダンスがこんなに楽しいものだと思ったのは初めて!!)
少女は、心の中でナージャのダンスに感動していた。


ダンデライオン一座のショーが終わり観客たちから団員がお金をもらいはじめた。少女は、ナージャに会いたくて駆け寄った。少しでも、話がしたくて・・・
「ありがとうございます。ありがとうございます。また見に来てください!!」
ナージャは、笑顔で観客からお金をもらいながらお礼の言葉を述べている。
少女は、ナージャに話しかけた。この感動を彼女に伝えたくて。
「すっごく楽しかった。あなたのダンス!!」
少女は、ナージャに声をかけて、思わず彼女の手を握ってしまった。
ナージャは、少し驚いて少女を見た。
「ありがとうございます。こんなに喜んでもらえると私もすごくうれしいわ。」
ナージャは笑顔で少女に答えた。
その時、ナージャの後ろから少年が出てきた。さっき侍の演技をしていた少年だ。少年はおもしろくなさそうな顔をして少女を見た。
「ナージャのファンが増えたんだね・・」
と少年は皮肉交じりにナージャに言う。それを聞いたナージャは少年の方を見て、少し怒る。
「ケンノスケそんな言い方ないでしょ!」
「また、ナージャの男のファンが増えちまった。」
ケンノスケは、少しからからかいながら言った。少女は、ハッとして、自分の姿を見た。確かに女の子には見えないかもしれないと思った。というのも、少女は、全身真っ黒の服に身を包みズボンをはいている。おまけに長い黒髪は帽子の中にしまいこんでいる。男の子に間違われても不思議ではない。
「また、きてくださいね。」
とナージャは、少女に笑顔を投げかける。少女は、男の子に間違われていることが少し不満ではあったが、彼女の笑顔が見られたので、あえて自分が女の子であることは伝えず、ナージャにお金を渡した。









「ナージャか・・・かわいい子だったな。また、会えるといいけど・・・。」
少女は、お昼に買ったリンゴを丸かじりにしながら人通りが少ない道を歩いていた。少女は、特に目的もなく、あちこちを旅していた。世界のいろんなものや人を見ることが少女にとって旅の楽しみであった。今日のような出会いを彼女はいつも求めていた。







その時だ。少女が歩いている方向から女の子の声がした。
「待てードロボー!!」
その声を聞いて少女は、その声の主がさっき出会ったばかりのナージャの声だと分かった。
(ドロボー?また昼間から大胆ね。)
 少女は、少し驚いた。その時、前から男が一人少女の方に向かって走ってきた。手には何か持っている。少女は、直感的にこいつがドロボーだということが分かった。
「邪魔だどけー!」
と男は少女に向けて言葉を放った。だが、少女はその場をどかなかった。どくどころか身構えてドロボーと対立しようとした。するとドロボーが少女を殴りにかかった。ちょうどその時ナージャの影が少女の目に映った。
「捕まえて―!!」
ナージャが叫ぶ。
少女は、おやすいごようよと心の中でいうとドロボーのパンチをすんなりよけてからドロボーに蹴りを入れた。ドロボーは、驚いてもっていた物を手から離した。少女はすかさずその手からこぼれたものを拾いあげた。
それは、すごく凝ったつくりのブローチだった。
ドロボーは、追ってきたナージャが近づいているのを感じ取り、少女には目もくれずそのまま走り去った。
「たく、ドロボーなんて下種な真似をするからこんなことになるんだ。」
と少女は、言葉をこぼした。そして、ナージャのいる方向を向いた。

ナージャは、息が上がっていた。よほど走ったのだろう。
「ハーハーありがとうございます。それは、私のお母さんからもらった大切なブローチなんです。本当にありがとう。」
とナージャは言うと顔を上げて少女をみる。一瞬ナージャは、少女をじっと見た。
「あー。今日公演に見に来てくれた・・。」
とナージャは、少女を見て言った。少女は、ナージャに覚えていてもらえたのがすごくうれしかった。こんなになんでうれしいのかよくわからないくらいに・・・。少女は、ナージャにブローチを渡して立ち去ろうとしたが、ナージャが少女を呼び止めた。
「あのーよかったらお礼をさせていただけませんか?」
少女は、ナージャの方を向けと少し迷った顔してからひらめいたように言った。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
少女は、ナージャに笑みを投げかけた。


この出会いが、お互いにとって運命的なものだとナージャも少女もこの時は、まだ知るよりもなかった。

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