もう一人のドリームナージャ15(マザーローズ編)

□第8章 母親の不安
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その夜、ナージャ、フランシス、アメリアはキースの借りている部屋にとどまることになり、ハービーとジェーンは自宅にいったん帰った。残されて3人は、それぞれ複雑な思いを抱えていた。
マコレットを取り戻したいが、アメリアを犠牲にしたくないナージャ。母親がよみがえったことよりもナージャが置かれている状況を打開したいフランシス。自分を犠牲にしてマコレットをよみがえらせたいアメリア。3人それぞれが抱えている思いが複雑なせいか沈黙が続いていた。
「やっぱりだめよ。」
突然ナージャが沈黙に耐え切れなくなって叫んだ。
「ナージャ?」
フランシスが言う。すると、ナージャはアメリアの方に向かって歩いた。
「もう一度、よく考えてくださいアメリアさん。」
ナージャが強く言った。しかし、アメリアは頷かず、微笑んでいるだけ。
「アメリアさんが、犠牲になることなんてないわ。せっかく、フランシスに会えたんですよ。」
ナージャが、訴えるがアメリアの意思は変わらないようで、そのまま微笑んでいるだけ。
「ナージャ、母さんだって君の思いはよく分かっているよ。」
フランシスがナージャに言い聞かせる。
「じゃあ、フランシスはやっと会えてお母さんと一緒にいたくないの?」
ナージャがフランシスに方を向いて言った。この質問にフランシスは心の中では動揺していた。しかし、表向きは冷静さを保っていた。
「ナージャ・・君が僕と母のことを思ってくれているのはうれしい。本当にうれしいことだよ。」
「フランシス・・・。」
「だけど、それで君は本当にいいのかい?」
「え?」
「君だって、やっと生き別れた双子の妹に会えたんだよ。マコは君にとってかけがえのない妹なんじゃないのかな?」
「そ・それは・・・。」
ナージャは、フランシスの言葉に俯いてしまう。
「母さんも僕も、君の妹をとても大切に思っているんだ。それにはこの選択しか・・・。」
「フランシス!それじゃあ、あなたはどうなるの?」
「どうって・・。」
「私、お母さんに会って分かったの。自分にとってお母さんがどのくらい大切な存在かって・・だから、あなたにとってアメリアさんは・・・。」
「ナージャ。」
アメリアがナージャとフランシスの会話に入って来た。
「ナージャは、フランシスと私のことをよく考えているのはよく分かったわ。でもね、忘れないで・・フランシスと私は、あなた以上にナージャとマコレットのことを考えているの。」
「アメリアさん・・・。でも、私は・・・。」
ナージャは、小声で言うとくるりと向きを変えて、隣の部屋を開けてバタンとドアを閉めてしまった。
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