もう一人のドリームナージャ14(ハーコート侯爵家編)

□第9章 思いやり
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「で、なんだよ聞きたいことって?」
キースは不機嫌そうにマコに言う。その態度はふてぶてしいものだった。
「そうね、どうしてあんなに食事の最中緊迫していたのかしら?」
マコが単刀直入に言った。
「別に、いつもああだけど・・・。」
キースは、マコの質問に答えたくないようでそっぽを向く。それを気に食わないと思ったマコはキースのほっぺをつまみ、伸ばす。
「い・・いて!なにするんだ!」
キースがマコに向かって言った。
「その口は、嘘しかいわないのかしらね?」
笑顔を作りながらもどこか怒りに満ちているマコの口調にキースは、ただならぬものを感じる。
「分かったよ、言えばいいんだろ言えば!」
キースはしばらく黙り込んでから言い始めた。
「今日の慈善活動は・・お父様が納得していた物ではなかったんだ。」
「え?」
ナージャとマコが同時に言う。すると、フランシスがその続きを言う。
「お母様には本当は他の仕事があったんだけど・・・慈善活動をお母様が優先したことでお父様が少し怒っていたんだ。」
「へえ。だからあんなに緊迫していたのね。」
マコは納得した。
「俺は、母さんが慈善活動を優先させたかったのかわかるぜ。」
キースが言い放つ。
「え?」
「だって、仕事って言ったって、他の貴族のご機嫌伺いだもんな。まったく、くだらない!」
「兄さん!」
「フランシスは、そう思わないのか?」
キースに切り返されてフランシスは、黙ってしまう。どうやらキースの思っていることと同じ考えのようだ。
「母さんが、行きたいところに行って、やりたいようにいくらでも慈善活動をさせてあげればいいのに・・・。どうして父さんはいつも母さんのやることを否定するんだ。」
母親思いのキースは言う。これは、キースの子ともながらの考えであったが、聞いているマコにとってはもっともな意見だと思った。
「キースの言っていることは、分かるけど・・・母さんには慈善活動以外にもやらないといけないお仕事がたくさんあるんだよ。」
フランシスがキースに向かって言った。
「はあ、生真面目なフランシスらしいごもっともな解答だな。でも、貴族のやることなんてたかが知れている。」
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