もう一人のドリームナージャ13(大英博物館編)

□第2章 不安
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一人の青年が、久しぶりに自分の家に帰って来た。そこは、もう半年以上留守にしていた家だった。家の前までくると、一人の年を取った女性が自分に微笑みかけていた。
「エドナさーん!」
青年は、女性に手を振って言った。
「あら、クリスチャン。お帰りなさい。」
クリスチャンと呼ばれた青年が眼鏡を基の位置に戻しながらエドナを見た。
「留守の間ありがとうございました。」
「クリスチャン、それより新聞であんたのエジプトでの成果が記事になっているのを見て私は、思わずうれしくなってしまったよ。」
クリスチャンはその褒め言葉を聞いて、頭を掻いた。
「いやー、今回はたまたま発掘が成功しただけですよ。発掘は、運試しみたいなところがありますからね。」
クリスチャンが言った。
「でも、1年前の発掘と言い、この回の発掘の件といい、クリスチャンは本当によく頑張っているわ。もし、ハドソンさんが生きていたら鼻が高かったでしょうね。」
エドナが笑顔で言った。クリスチャンも、少し照れくさそうな顔をする。クリスチャンにとってハドソン教授は、親のような存在だった。貧乏だったせいで学校にいけなかった自分に学費を出してくれたおかげでクリスチャンは好きな考古学を勉強することができた。それに、ハドソン教授とのつながりがあったために、発掘調査にも同行できた。
「ハドソン教授が僕の成功を喜んでくれたらいいですね。」
クリスチャンが言うと、エドナが頷いた。
「きっと、喜んでいるわよ。クリスチャンは、今後どうする予定何だい?」
「エドナさん、そうですね。しばらくは大学で考古学の勉強をしようかと・・・。」
「クリスチャン、私は知っているんだよ。いろんな調査団から誘いが来ているのを・・。」
そう言うと、エドナは、クリスチャン宛に届いた郵便物を見せた。
「こんなにたくさん・・・。」
クリスチャンは、驚いていた。
「クリスチャン、本気でハドソン教授の意思を継ぎたいなら大学よりも調査団にまた加わってエジプト文明の解明に一役買ったらどうかしらね。」
エドナは、クリスチャンの真面目で一生懸命な姿が好きだった。こんなに考古学に才能がある彼をこのままイギリスいるのは忍びないと思っていた。
「・・・エドナさんの気持ちは嬉しいですが・・・。僕はもっと勉強したいと思っていますので。」
「まあ、確かに勉強も必要だね。クリスチャン今後も応援しているからね。」
エドナは、笑顔でクリスチャンに言った。
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