もう一人のドリームナージャ12(ドーバー海峡編)

□第10章 ブローチと万華鏡
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メイン会場にいる客たちは相変わらず放心状態で、その場に佇んでいたり、座り込んでいたりしていた。一方のキースは、ナージャを救うおうとしていたが、自分の目の前にいるジェニファーがナージャに相変わらず銃口を向けているため、動くことができないでいた。もし、自分が動いてしまうことでナージャに危害が加えられたらたまったもんではなかったからだ。
「さあ、彼女を助けたいならそこに座り込みなさい!」
ジェニファーが高らかに言い放った。どうやら自分に対してあの力はあまり使いたくないようだ。キースは、おそらくさっき客を放心状態にさせたのと、マコと戦った時に力を使ったのであまり目の前にいる一人の人間に対して力を使いたくないのだと思った。キースにとっては正直そのほうが好都合だった。なぜなら、自分が捕まったとしても客のように放心状態にはならないからだ。つまり、隙を見てナージャを救うことだって可能だと考えていた。
「キース・・・逃げて!」
ナージャが叫ぶ。しかし、フランシスと約束したことやナージャが自分にとって大切な存在であることから彼はその場の言う通りにした。キースは、手を上げて座り込むと周囲にいた海賊たちが彼をすぐに縛り上げた。それを見たナージャの顔色は青ざめた。
「キースは、関係ないわ。私が、つかまっているんだから・・・彼は開放しなさい!」
ナージャが、ジェニファーに言い放った。
「関係ない?この豪華客船に乗っている時点で関係ないとは言えないのよ。」
ジェニファーがナージャに言った。
「・・・あなた一体なにが目的なのよ!」
「私の目的は、この豪華客船に乗っている人たちの持っている金目の物をいただくことよ。」
ジェニファーは、ニヤリと笑った。そして、ナージャの胸元にあるブローチと彼女が持っていたトランクに目をやった。
「あら、あなた格好こそは、一般人みたいだけど、そのブローチ結構高価なものじゃない!」
ジェニファーは、自分の気にいった品が見つかったみたいにうれしそうな声を上げる。
「これは、お母さんと私をつなぐ大切なブローチよ。あなたなんかに渡さないわ!」
ナージャが言い放つ。しかし、ジェニファーは、ナージャの胸元にあったブリーチを無理やり取ろうとした。ナージャは、必死に抵抗する。しかし、その抵抗は虚しくブローチはジェニファーに取り上げられてしまった。そして、ジェニファーは、ナージャを床にたたきつけた。
「ナージャ!」
キースの声が響く。彼もナージャのことを助けたいと思っているが、つかまった状態からでは彼女を助けることは困難だった。
「さて、ナージャさん・・・あなたが持っているそのトランクも渡してもらいましょうか。」
ジェニファーのターゲットがトランクに移った。ナージャは、必死にトランクを守ろうとしたが、がたいがいい海賊の男たちにトランクを力づくでとられてしまった。
「それは、私の大切な物なの!」
ナージャは必死に訴えるが海賊たちは、彼女の反応をただ面白そうに見ているだけだった。この状況にキースも切れそうになっていた。自分だって、盗賊をしていたが、明らかに今の海賊のようなことはしなかった。怪盗黒バラは、権力者や金持ちなどを狙ったりはするが、ナージャのように弱い立場にいるものから無理やり物をとることはなかったからだ。
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