もう一人のドリームナージャ8(鎖の魔女編)

□第8章 黒バラの予告状
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その夜キースはホテルには帰ってこなかった。フランシスは、キースが責任を感じて、マコを助けに一人でいってしまったと考えていた。しかし、そう思っていても、ナージャを一人にさせるわけにはいかないし、かといって彼女と一緒に行動することは危険だと考えていた。それにナージャにキースの行動が知られたらきっと一人だって行ってしまう可能性が十分あった。
「キースは、帰ってきていないわ。もしかして・・・。」
案の定ナージャは、キースがマコを助けに一人で行ってしまったのではないかと思い始めている。でも、フランシスはナージャを説得することは難しいと思っていた。彼女にとって、マコは親友だし、キースは彼女にとって愛する人物の一人だからだ。だから、無理に止めることは彼女の意志に背くことだと思っていた。
「ナージャ、キースはきっと戻ってくるから。」
フランシスは優しく言った。しかし、彼女はもう感じ取っているし、自分だってキースが無茶な行動に出るくらい予測できた。彼は、自分と違って大胆だし、子どものころからその場の感情で行動することもたたあった。そのせいか、キースはいつも大人たちから怒られていたのだから。
「でも・・・。」
ナージャは、不安そうな顔をしている。マコだけではなく、キースまでいなくなったら彼女はきっと不安になる。それにきっと後悔する可能性が高い。でも、自分はナージャを危険なところに行かせたくないと思っている。しかし、自分の感情だけでナージャを縛り付けることは、自己満足にすぎない。ナージャの意志を無視している。
「ナージャ、僕の方を向いてくれないかい?」
フランシスは、ナージャを自分の方に振り向かせた。ナージャの瞳からは、悲しみと不安がにじみ出ていた。
「ナージャ、僕は正直君に危険なところに行ってほしくない。君にもしものことがあったらと思うと、僕は正気じゃいられなくなるからだ。」
「フランシス・・。」
ナージャは、フランシスを見つめる。
「でも、それは僕の自己満足だと思っている。たとえ、危険から遠ざけられても、きっと君は納得しないはずだから。だから、僕はあえて君に聞くんだ。君は、どうしたいのか君の意思を聞かせてくれないかい?」
フランシスが、真剣な目でナージャに問いかける。すると、ナージャは少し考えてから、フランシスの方を見た。
「フランシス・・・私は、マコを助けたい。たとえそれが危険なことだと分かっていても、マコは私にとって大切な人だから!」
ナージャの青い瞳の中に強い炎をフランシスは感じた。
(やっぱり君は・・・籠の中の鳥じゃないんだね。だから、僕は君に惹かれるんだろうね。)
「分かった。でも一つだけ、約束してほしいんだ。」
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