もう一人のドリームナージャ10(ブラックバレンタイン編)

□第17章 告白
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「僕にとって音楽は・・・苦痛でしかないよ。君と違って・・・。」
ウィリアムの苦しい気持ちが前面に出た答えだった。マコはその答えを聞いてショックだった。
「私は、ウィルに苦痛を知らない間に与えていたのね。」
「いいやそれは違うよ、マコレット。」
「え?」
ウィリアムは、マコの方に歩み寄った。マコは相変わらず偽物のキースに抱かれていて動くことができない。
「君の曲は・・・僕にとって希望だった。君の曲を弾いているときが一番なにもかも忘れられていた。自由でいられたような気がしたんだ。」
「ウィル・・・。」
「今ならどうしてか分かるよ。僕は君に依存することですべてから解放されたと思い込んでいたんだと・・・。でも、もうそれではだめなんだ。自分のことに責任を持つべきなんだ。」
その言葉を聞いて、マコの目が見開かれる。
「マコレット・・・僕は、君に感謝しているよ。君は、僕を見捨てずにここに来てくれた。それだけで、もう十分だよ。君は、もう罪にさいなまれなくていいよ。」
ウィリアムが穏やかな表情でマコを見た。そして、ポケットから緑色のクリスタルを出し、なにか呪文を唱えると偽物のキースはいなくなった。マコは開放された。
「マコレット・・・この曲は、僕には弾くことはできない。」
「え?」
「だって、これは君が彼を思って書いた曲だろ?それに今日はバレンタインデーだ。まあ、普通は男性からプレゼントなんだろうけど・・・彼に聞かせてあげるといいよ。」
マコはその楽譜を受け取ると抱きしめた。
「ありがとう・・・ウィリアム。」
「あと、それと・・・これを君に。」
ウィリアムがマコにツイン・ジュエルとナイト・ジュエルを差し出した。
「ツイン・ジュエルも?」
「ああ、こいつを見ていると自分を見ているみたいで。やっぱり本物には勝てないからね。」
ウィリアムがマコに微笑んだ。マコもウィリアムに微笑み返す。
その時、こちらに向かって走ってくる足音が聞こえた。マコとウィリアムがその方向を見ると、なんとキースとダレンだった。
「キース、ダレン!」
マコが言うと、キースはそのまま走ってくるなり、ダレンに掴みかかった。
「おまえ・・マコレットに何をしたんだ!」
その態度にさすがのマコレットも唖然としてしまう。
「キース・・・大丈夫よ。私、なにもされていないわ。それにちゃんと楽譜も返してもらったから。」
それを聞いてキースは少し納得したのかウィリアムから手を離し、今度はマコの方を見た。
「マコレット・・・。」
そう言うと、キースはマコを抱きしめた。マコはびっくりして飛び上がってしまう。
「あー。キース!おまえなにやってんだよ。」
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