もう一人のドリームナージャ10(ブラックバレンタイン編)

□第7章 愛の形
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(やっぱりフランシスは、ナージャのことが・・・ナージャも・・・。)
ジョンはそんな二人の姿を見ながらなんだか急に曲のアイデアが浮かんできた。お互いに見つめ合う恋人が微笑みあって、少し恥ずかしいけど、なんだか暖かな雰囲気がそこには広がっていた。ジョンは、これがいわいる二人だけの世界なのだとこのとき分かった。
(フランシスも、ナージャも僕にとっては、大切な人たちだ。そう、二人のために今回のコンクールの曲は作ろう。)
ジョンは、決心を固めると、部屋に向かおうとした。それを見た、ナージャとフランシスがジョンのほうに駆け寄った。
「ジョン・・・。」
ナージャが声をかけるとジョンが、笑顔でナージャとフランシスを見る。
「二人のおかげで曲が書けそうだよ。」
それを聞いたナージャの瞳が輝いた。
「よかったわ。じゃあ、その曲ができるのを楽しみにしているね。」
「ああ。期待してくれ、二人のために今回は曲を書くから。是非、できたらコンクールで披露するよりも先に二人に聞いてもらいたい。」
それを聞いたナージャとフランシスは、笑顔で頷いた。




そのころ、ウィリアムは自分の部屋にいた。ウィリアムの部屋には、ジョンの部屋同様にピアノが一台置かれていた。しかし、ウィリアムはピアノには目を向けず、山積みに置かれている書類の方に目を向けた。
「マコレット・・・君だったら今回のコンクールのお題をどうやって曲にするんだ。」
ウィリアムは、考え込んだ。というのも、ウィリアムが、以前マコに書いてくれた曲の中には、今回のコンクールのお題である恋について書かれている曲が一曲もなかった。それは、マコが小さかったというのもあるし、彼女自体が恋なんてしたことがなかったからだ。だから、ウィリアムは、コンクールが近づくにつれて焦っていた。
「恋・・・いまいち分からない。しいていえば、マコレットに対する気持ちなんだろうか。でも、実際に僕には、恋をテーマにして曲を作ることなんてできない。」
そういうと、ウィリアムがテーブルをたたいた。
(僕には、時間がない。あとコンクールまで数日しかない。それまでにマコレットに曲を書いてもらわないと・・・。でも、彼女には、あの男がついている。あの時だって急に現れて彼女を横取りした。)
ウィリアムは、頭を抱えた。そして、あの金髪で青い瞳をした青年を頭に思い浮かべた。
「絶対、マコレットは僕の物だ。あいつにマコレットの価値なんて分からない。本当に彼女の価値を理解できるのはこの僕だけだ。」
ウィリアムが少し強めに言った。すると、テーブルの上に無造作に置かれていた緑色のクリスタルが輝いた。ウィリアムは、驚いて目を見開く。その緑色のクリスタルは、偶然拾ったもので、つい最近手に入れた物だった。拾った時はただきれいなクリスタルだと思ったが、次第にその力にとりこになってしまった。ウィリアムが、そのクリスタルを掴む。すると、ある映像が脳裏に映し出された。映像を一通り見終わるとウィリアムは、ニヤリと笑った。
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