もう一人のドリームナージャ10(ブラックバレンタイン編)

□第3章 真っ白な楽譜
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そういうと、ジョンは、3人を部屋に招き入れた。
部屋にはグランドピアノが一台置いてって、大きな窓からは日の光が差し込んでいる。
「素敵ね!」
マコはその光景を見て歓声を上げる。
「ほんとに。」
ナージャもマコの言ったことに賛同する。
「さあ、そこの椅子に好きなように座ってくれ。」
ジョンは、近くにあるテーブルと椅子の場所を指示した。言われるまま3人は、椅子に座った。そして、ジョンは、紅茶を入れて3人の前に置いた。3人はそれぞれジョンに紅茶を入れてもらったお礼をいうと話し出した。
「このフランスで君たちに会えるとは思わなかったよ。いつまでここにいるつもりなんだい?」
ジョンが3人の顔をそれぞれ見ながら言った。
「うーん、特にいつまでいるかは決めてないわ。」
ナージャが言うとすかさずマコが言った。
「そうね。私は、ジョンの出るコンクールを見るまではここを離れないつもりよ。」
マコの向かい側にいたジョンの顔が一瞬青ざめた。マコは、その顔を見て、かなり重症だと思った。
「そうなのかい・・・。」
「だって、私本当に楽しみなのよ。コンクール‼ジョンの曲って、どれも素敵だから。」
マコはわざと追い打ちをかけるような言葉を並べる。
「あ・・ありがとう。君にそう言ってもらえてとてもうれしいよ。」
(もう、ジョンったら、無理しちゃって・・まあ、そうさせている私が意地悪なのか。)
「マコの言う通りよ。私もジョンの曲好きよ。とってもきれいだし。」
ナージャも賛同する。たぶんナージャの場合は、無意識であるが、そのことがジョンにプレッシャーを与えていることに気づいていない。そんな会話を聞いていたフランシスが、マコの言わんとしていることに気づき始めて会話の流れを変えようとした。
「えーと、ジョンは、ずっとここにいるのかい?」
「ああ。いつもコンクール前は、最後に調整をしなくてはいけないからね。」
ジョンが言うと、フランシスが少し考えてから言った。
「へえ、でもたまには気分展開したほうがいいよ。どうだい、これから少し僕らと一緒に外に出ないかい?」
「え?」
ジョンは、フランシスからの突然の提案に驚く。ナージャも手をたたいて言った。
「それいいわ。ジョン、たまには息抜きしないと!」
ナージャが笑顔でジョンに言ったので、ジョンが一瞬ドキッとした。
(あーあ、ジョンはナージャのことが好きなのよね。だから、私はナージャをすこしばかり利用して作曲へのプレッシャーをかけようとしたんだけど・・・フランシスは、どうやらジョンに気分転換をしてもらいたいみたいだし・・・ナージャもその気だから・・・私の案が出る前に沈没みたいね。)
「そうね。たまには違う空気を吸うのも悪くないわ。」
マコもとりあえずその場はフランシスの案に賛同した。
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