もう一人のドリームナージャ10(ブラックバレンタイン編)

□第2章 静かな挑発
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「だけど?」
マコは首をかしげるとダレンが言った。
「今回のコンクールは、ジョンはたぶん賞を取る事はできないだろうな。だって、前評判ではウィリアムがリードしているし・・・それに最近聞いた話だけど、彼スランプ気味だとか。」
それを聞いたナージャとフランシスの顔色が曇った。ジョンは、以前にもスランプに陥ったときに危険な行動をとったことがあった。作曲家でもある彼はだれよりも繊細な心を持っているせいで、ひとたびスランプに陥ると周りのことが見えなくなってしまうことがただあった。
「そう、それは心配だわ。」
ナージャが、言うと不安そうな顔をするとマコはそれを察して言った。
「だったら、今すぐジョンのところに行こうよ。」
マコの突然の提案に一同がびっくりした。
「でも、マコのお父さん探しが・・・。」
「別にいいのよ。それにジョンのスランプの方が重要よ。」
マコも以前ジョンがスランプに陥った時の姿を目の当たりしているので、ジョンのところに行く必要があると思った。
「じゃあ、ちょうどいい。ちょうどウィリアムとジョンの泊まっているホテルが近いからそこまで送って行くよ。」
そういうと、ダレンはマコの手を取り馬車に乗るまでエスコートした。その姿が完璧なまでの王子様だったため、キースはまた内心穏やかではなかった。
「兄さん・・・我慢だよ。」
フランシスがキースだけに聞こえるように小声で言った。
「そんなこと分かっている。」
わずかながらの理性を総動員してキースはホーカーフェイスを保った。一方のフランシスは、ダレンのせいでキースがいつ爆発するかとひやひやだった。
(兄さんは、けっこう短期だから・・・まあ、我慢しているけど・・・あれがもし、マコとナージャの目の前じゃなかったら殴りかかっていたな・・・やれやれ。ダレンには、あまりキースを挑発しないように言わないとこっちが心臓に悪いな。)
フランシスが、キースとダレンのことに気をもんでいる表情に疲れがなんとなく見えたのが分かったナージャがフランシスに声をかける。
「フランシス・・・なんだか疲れてない?」
フランシスのことをよく見ているナージャはフランシスに声をかけた。
(君に気づかれるようじゃあ僕もまだまだだね。)
「大丈夫だよナージャ。さあ、馬車に乗って。」
フランシスがナージャをエスコートして馬車に乗せて、一行はジョンが泊まっているホテルに移動した。
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