もう一人のドリームナージャ10(ブラックバレンタイン編)

□第2章 静かな挑発
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マコは驚いて手を素早くひっこめた。
「おいおい、久しぶりのあいさつなんだから、そんな態度をとってもらっちゃ困るな。マコレット。」
ダレンがマコに微笑んだ。
「久しぶりね・・・ダレン。」
マコは手の甲に急に口づけされてドギマギしてしまって声が上ずってしまった。その光景を近くで見ていたキースの表情がみるみるうちに不機嫌になったのはもちろんのことだ。
「兄さん・・・落ち着いて。」
フランシスが今にもダレンをにらみそうなキースを見て制した。
「ナージャも久しぶり・・・それにフランシスも・・・キースも。」
なぜかダレンはキースの名前を呼ぶときの声のトーンが微妙に低くなった。そのことに気がついてのは、他ならぬキースだった。
(こいつ、俺に喧嘩売っているのか。)
表向きは冷静を装っていたキースであったが、内心は穏やかではなかった。そんなキースの動揺を感じ取ったダレンがニヤリと笑った。
「ところで、ダレン・・・どうしてフランスに?」
マコの問いかけにダレンは笑顔で応じた。
「実は、友人がピアノのコンクールに出るんだ。それで、応援に来たんだ。なんでも、今回のコンクールは大注目だからね。」
「ピアノのコンクールってこれのこと?」
マコはさっきまで見ていたポスターの写真を指差した。ダレンはそれを見て深く頷いた。
「へえ・・・そうなんだ。」
マコはもう一度ポスターを見てニコリとした。
「マコレットも出てみるかい?」
ダレンが冗談半分で言うと、マコは慌てて言った。
「私なんかお呼びじゃないわ。それより、その友人ってこの人のこと?」
マコはポスターに描かれていた青年を今度は指さした。
「ああ、そうだよ。俺は、ウィリアムと学生時代友人だったから。」
「へえ、そうなんだ。」
マコがウィリアムの名前を聞いた時どことなくうれしそうな顔をしたので、ダレンは不思議に思った。
「ひょっとしてマコレットはウィリアムと知り合いかい?」
「え・・・えと・・別にそんなんじゃないわ。」
「ふーん。」
ダレンがあまり納得していなさそうな声を出した。
「ねえ、もしかしてピアノのコンクールならジョンもでているのかしら?」
ナージャがダレンに聞いた。
「ジョンってジョン・ウィタードのことかい?」
「ええ。私たち知り合いなの。」
「へえそうなんだ。確かにジョン・ウィタードはコンクールに出ている。だけど・・・。」
ダレンが言いにくそうな声で言った。
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