もう一人のドリームナージャ3(操られた貴公子編)

□第9章 狙われた黒バラ
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ナージャは不安そうにキースを見ている。
「分かりました。私一人で取材させていただきます。」
キースは丁寧に言った。すると、ナージャがキースの袖を掴んだ。キースは、ナージャが心配そうな顔をするので、優しい顔をして言った。
「ナージャ、大丈夫だ。それより、マコレットをみんなと一緒に探してくれ。」
「でも・・」
不安そうなナージャに笑顔でキースが言った。
「ナージャがここに来た目的は、マコレットだろ。それに俺がここに来た目的は表面上あくまで取材だ。」
キースがもっともらしいことを言ったので、ナージャは袖を握っていた手を離した。そして、キースはナージャに最後に小声で言った。
「ナージャ、一人で行動するな。」
これは、さっきまでの言葉遣いとは明らかに異なり、命令口調だった。そして、キースは執事についていった。




キースは、長い廊下を執事の後ろについて歩いた。途中、そんな彼の姿を見た一人の人物がいたがそのことに彼は気づかなかった。執事が、大きな扉の前で足を止めた。
「ここが、旦那様の部屋です。」
そういうと、執事が扉を叩き、扉を開いた。キースが部屋に入ると執事は扉を閉め、カギをかけた。キースは、カギをかける音を聞いて、何か嫌な感じがした。そして、部屋の奥にあるデスクに近づいた。そこには背もたれが長い椅子があり、自分に背を向けたまま誰かが座っている。
「ようこそ。キース・ハーコート・・・いや、元怪盗黒バラっていったほうがよかったかな?」
その声は明らかに年老いた老人のものではなく、少年のように若い声だった。しかも、キースには聞き覚えがある声だった。
「おまえは誰だ?ウォール伯爵じゃないな。」
キースがいうと、椅子がクルッと回転し、座っている人物が分かった。
「久しぶりだね。元気だったかい?」
デイルがキースに話しかけた。キースは驚いた。そこに座っていた少年は、ついこの間夢の中で出会った少年だったからだ。
「お前は、魔法使いとかって言っていたな。」
デイルは、キースが覚えていたことがうれしくて仕方ない様子で言った。
「覚えてくれたんだね。そうさ、僕は君たちの魔法使いさ。」
「悪い冗談だな。」
キースは冷静だった。キースにとって目の前にいる少年は魔法使いというよりも悪魔のように見えた。
「まあいいさ。君とずっと話してみたかったんだ、キース。まずは自己紹介といくかな。僕の名前はデイル・ログフォート。君の母親の友達さ。」
「母さんの友達?」
キースが疑うのも無理もない。もし、アメリアの友達というのであるならばもっと年をとっているはずだ。しかし、ここにいる少年は明らかに自分よりも年下で子どもだ。
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