もう一人のドリームナージャ10(ブラックバレンタイン編)

□第18章 本当の思い
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その後マコの身に起ったことは一言では言い表せなかった。というのも、マコの演奏が終わった後会場中が割れんばかりの拍手で包まれるとともにコンサートでもないのにアンコールを求める声であふれかえった。中には、ステージまで来てマコに握手を求めたいものまで現れる始末。マコは、どうしたものかと頭を悩ませていた。すぐにウォール伯爵が事態を落ち着かせようと奔走に走ったが、会場の混乱は収まるどころかますますヒートアップの状況。
「私大変なことしちゃったのかな?」
マコは頬をポリポリとかきながら言った。会場の混乱を避けるべく、すかさずキースとダレン、ウィリアムがマコの側によってきて護衛をする始末となった。会場を出るとすぐに記者に囲まれてしまい、マコはどうすればいいのか分からなかった。記者たちがこぞってマコから独占インタビューをもらおうと必死だった。しかし、それを見てキースはマコが混乱しないようにしっかりサポートして誰もいない部屋まで誘導した。一方のダレンは、ウィリアムについていた記者たちを払いのけるのに精いっぱいでマコとキースのことまで目が向かなかった。



二人きりになったマコとキースは顔を見合わせて笑った。
「もう、こんなことになるなんてびっくりね。」
「ああ、まったくだ。俺の予想をはるかに超えていたな。」
二人が笑い終えるとしばらく沈黙が続いた。マコはキースになんて話しかけようか迷っていた時だった。キースがマコの目の前に小さな花束を差し出した。
「え?」
「マコレット・・・今日の曲すごく素晴らしかった。」
キースが優しい眼差しでマコを見ると、マコはうれしそうにキースから花束をもらった。
「ありがとう。私、キースに一番聞いてほしかったの。」
「え?」
「だって、いつもあなたに助けてもらっているから・・・そのお礼に・・。」
「マコレット・・。」
キースは心の中で思った。いつも助けている人物だったら自分に限らずナージャやフランシスだっているのに、わざわざマコレットは自分のために弾いたと言っているこれは、いったいどういう意味なんだと思った。
「勘違いしないでね。もちろん、これはナージャやフランシスのために弾いた曲でもあるんだからね。」
素直になりきれないマコは付け加えてナージャとフランシスの名前を言った。それを聞いてキースは少し、残念そうな顔をする。
「マコレット!」
「なに?」
マコがキースの方を向くと、キースの青い目が視界に入った。
「いつか、俺のために曲を書いてくれないか?」
キースの急な言葉にマコの思考が停止する。
「え・・・ええええええええ。」
マコは叫んだ。
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