もう一人のドリームナージャ10(ブラックバレンタイン編)

□第17章 告白
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マコはキースに連れられて誰も普段なら入らない空間に来ていた。マコはさすがに始めて来たはずのキースがこんな場所を知ってことに不信に感じ始めた。
「ねえ、キース・・・あなた本当にこんなところで見たの?」
「・・・。」
キースは答えようとしない。マコはその反応に対してだんだん不安になってきた。
(キースがこんな場所知っているはずはない。いくら怪盗黒バラでも、始めて来た場所をこんなにしりつくしているなんて考えにくいわ。)
「ねえ・・・キース・・・本当にあなたキースなの?」
マコは思い切って聞いてみた。すると、キースの動きが止まった。キースの動きがとまったのを見てマコはますます嫌な予感にかられた。
「あなた・・・本当は・・・。」
マコは周囲を見て、キースの手を振り払おうとしたが、キースが自分の腕をつかむ力が強くて離れない。
「離して!」
しかし相手は話どころかマコを引き寄せる。マコは引き寄せられて、相手の胸の中にすっぽり納まってしまった。マコにはもう目の前にいる人物が偽物であることが分かっていたのにキースの姿でこんな風に抱きしめられて自分の心臓の鼓動が高まっているのを感じた。
(私ってこんなことで・・・。まったく、本物の彼じゃないのに・・・。)
「マコレット・・・。やっぱりキースのことが好きなんだね。」
マコの後ろの方から声が聞こえた。マコは偽物のキースに抱かれながらもその声の方を見た。
「ウィリアム・・・。」
マコは声を上げる。ウィリアムが力なく笑いかける。
「偽物を使って君をおびき出したことについては謝るよ。こうでもしないと君には会えないと思っていたから・・・・。」
ウィリアムが言うと、マコはウィリアムをにらんだ。
「私を別におびき寄せなくても、あなたを探したわ。」
「そうか・・・それはうれしいよ。君には、もう見捨てられたと思ったからね。」
伏し目がちにウィリアムが答えた。
「見捨てるだなんて・・・そんなこと私はしないわ。むしろ私はあなたの力になりたい。あなたにもう一度自分で曲を作ってほしいの。」
マコは訴えかけた。しかし、ウィリアムは首を横に振る。
「僕は、もう曲を書くことはできないよ。作曲家として僕はもう終わっているから・・・そう、10年以上前にもう終わっているんだよ。」
ウィリアムが小さい声で言った。その表情が切なすぎてマコはどう答えていいかわからなかった。それにそうさせた原因をつくったのは自分だったからだ。
「ウィル・・・ウィルにとっての音楽は楽しい物じゃないの?」
ウィリアムはその言葉を聞いて黙ってしまった。しばらく沈黙の時間が流れる。そして、ようやく口を開いた。
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