もう一人のドリームナージャ10(ブラックバレンタイン編)

□第15章 覚悟
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マコが、キースに連れられて部屋に戻って来た。ナージャは、マコが部屋に入るなりマコに抱き付いた。
「マコ・・・よかった。無事で!」
マコを抱きしめる腕は優しかった。
「ナージャ・・・。心配かけてごめんなさい。」
マコがナージャに言った。ナージャは、首を横に振って言った。
「マコが無事なら私はそれだけでいいわ。それより、ゆっくり休んでね。」
ナージャがマコを見ながら言った。マコが頷く。
ナージャは、マコに紅茶を薦め、マコもその紅茶を飲んで気持ちを落ち着かせた。
「また、ナージャを巻き込んじゃったね。」
マコが言うと、ナージャは隣に座ってマコの肩を抱く。
「マコ・・・そんなこと気にしないで。それよりも今日あったことを聞かせてほしいわ。」
ナージャは、マコの顔を覗き込むように言った。
「分かったわ。」
マコは、ウィリアムに監禁されたことや彼のために曲を作ったことなどを話した。しかし、ウィリアムが気にしていたキースと自分のことに関する話については触れなかった。話終わるとナージャがマコの手を握った。
「じゃあ、マコはウィリアムのために曲を作ったのね。」
「ええ・・でも、本当は彼自身に曲を作ってほしかったの。そう、ウィルにも訴えかけたんだけど。」
「マコは悲しかったのね。」
ナージャは、マコがやったことやウィリアムの行為について批判することなく、マコの気持ちを察して言った。そのことは、マコにとって救いだった。マコは、心の中で自分が小さい頃からやっていたことに関して罪意識が強かった。同時に今のウィリアムの状況が自分にとってとても悲しいものだった。
「ええ。ウィリアムは、本当は私の憧れのピアニストだったから・・・。だから、彼のあんな姿を見るのがつらかった。」
マコは自分の気持ちを話した。
「憧れのピアニスト?」
「そう、私小さい頃彼がピアノを弾いている姿がとても好きだったの。たぶんそれが、初恋だったのかもしれない。とにかく、彼はとても輝いていて、とてもまぶしかった。」
マコが遠くを見ながら話した。そんなマコの姿を見てキースが目を細める。
「でも、私はそんな彼から光を奪ってしまった。そう、私が書いた曲がきっかけで。彼は、私のことを天才だっていうけどそれは違うと思うの。」
マコは少し間を置いてからまた話し出した。
「だいたい天才がいるって考え自体が気に入らないわ。確かに素質とかは多少あるかもしれないわ。でも、90%以上は、自分の努力よ。いくら才能や素質があっても努力しなければ水の泡になってしまうわ。ナージャだって、ダンスをお客さんの前で披露するのに練習するでしょ。」
「え・・ええ。お客さんの前できれいに踊れるように・・・私のダンスを見て楽しんでくれればいいなって思っているわ。」
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