もう一人のドリームナージャ10(ブラックバレンタイン編)

□第10章 友人
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一方部屋を出たフランシスは、ナージャがなんでキースと話したいと言い出したのか少し気になったが、同じくらい気になっているもう一つの事の方に目を向けることにした。フランシスは、気づけばジョンの部屋の前に来ていた。作曲中のジョンの邪魔はしたくないけれど、やっぱり彼の友人としては曲の進みが気になっていた。フランシスは、ドアをノックした。すると、声がした。
「どうぞ。」
フランシスは、その声を聞いてから部屋に入った。部屋に入るとそこには、ピアノに向き合っているジョンの姿があった。最初に部屋を訪れたときの彼の表情よりずっと今の彼の方がいきいきしていた。その姿をフランシスは見て安心した。
「フランシス!」
ジョンは、部屋に入って来たのがフランシスだと気づくと、作業をいったん中断し、彼のほうに歩み寄った。
「ジョン・・・すまない。邪魔しに来たわけじゃないんだけど。」
「何言っているんだ。フランシスならいつでも大歓迎だよ。」
ジョンは、笑顔で話す。
「その様子だと曲作りは順調のようだね。本当によかったよ。」
フランシスが言うと、ジョンが頷いた。
「君たちのおかげだよ。たぶん、今の作っている曲は、君たちがいなかったらきっと作れなかったと思う。」
「君たち?」
フランシスは、ジョンがなんで複数人を示す言葉を使っているのか気になった。
「えーと、実は、君とナージャの姿を見ていてこれだと思ったんだ。」
ジョンが、言った言葉にフランシスは、少し驚く。ジョンは、どうやらフランシスとナージャがお互いのことを思っていることが分かったらしい。フランシスが驚いている姿を見てジョンが笑った。
「フランシス、なんで分かったんだと、少しびっくりしているみたいだけど。バレバレだよ。君たちは、とてもお似合いだと思うよ。」
ジョンが、正直に話した。フランシスは、少し照れている。
「あ・・ありがとう。ジョン。」
フランシスが言うと、ジョンが肘で小突いた。
「ナージャを夢中にさせるなんて君もなかなかだよね。本当にうらやましいよ。」
ジョンは、笑顔で言った。
「うーん。ナージャよりも、僕の方が彼女に夢中なのかもしれない。僕の頭の中は、常に彼女のことでいっぱいだからね。」
フランシスは、キースと違って自分の思っていることを素直に言える性格だった。だから、友人のジョンも、フランシスの言っていることは彼の本当の気持ちなんだと思った。
「へえ、けっこうぞっこんなんだね。まあ、ナージャに会ったことがある人なら彼女を好きにならずにはいられないだろうけどね。」
「ああ、そうだね。ナージャは、いつも太陽にみたいに輝いているから。」
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