書物‐弐‐
□年上の白衣のマドンナ
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『……そんなに見つめられたら穴が開くんだけど、俺に見惚れた?』
「っ!」
『ふふっ…図星』
「…うっせぇ」
不覚にも長い時間女を見ていたらしい……クソッ。
「……………名前」
『ん?』
「…テメェの名前…」
そっぽを向きながら聞いた。すると女は小さく笑った。
『…まき』
「………!!」
視線を向けると目が合い、アイツは微笑んでいた。
まるで心臓を鷲掴みにされてるんじゃないかと錯覚するくらい高鳴り、俺はまきに釘付けになった。
どのぐらい経ったか、先に口を開いたのはまきだ。
『教師を口説こうなんて、度胸が据わってんね、怖いもの知らずなの?』
「…俺は欲しいものはどんな手段を使ってでも手にいれる主義なんだよ」
『なんかそれ、どっかのガキ大将みたい』
「知り合いに青だぬきなんざいねーよ」
『……なってあげてもいいよ?』
「…あ?」
『“俺の女”になってあげてもいいよって言ってんの』
「……正気か?」
『狂ってるように見える?』
「ケケケケケッ!!」
『あはははは!』
― ― ―
バンッ!!!
『っ!!?……ちょとぉー、扉は静かに開けなさいよ!』
「うっせ」
『はぁ……で、どこぶつけたの?』
「…俺はまだ何も言ってねぇぞ」
『あんたの立ち振る舞いで大体分かります。伊達にこの仕事やってないからね。
ほら、そこ座って』
「………ケッ」
部室でパソコンをやっていて、ふとまきの事を考えていた。
その時、糞チビ達が運んでいたダンボーがバランスを崩して俺の左肩に当たりやがったんだ。
俺とした事が避ける事が出来ず、角が直撃。
糞マネが手当てすると喚いていやがったがガン無視してまきのとこに来た。
コイツは俺を一目見てどういう状態なのか分かったらしい。
『…確かアメフト部ってマネージャーいなかった?その子に手当てしてもらえばよかったのに』
「やなこった、オメェの方が腕は確かだ。治りも早ぇだろ」
『まあね』
「それに、他の奴にベタベタ触られたくねぇしな」
『ふーん………はい、出来た』
「ん」
『ソファーで少し寝たら?』
「あ?」
『最近あんまり寝てないんじゃない?寝不足だと良い動きが出来ないよ?』
「……」
図星をつかれて言い返せなかった俺は素直にソファーに寝そべる。
布団と被せられると自然と睡魔が襲ってきて、まきに頭を撫でられたところで俺の意識が途切れた。
『ふふっ……おやすみ』
−終−