書物‐弐‐

□貴方と一緒に
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『……………敦………』


紫原の苦労を知ってか知らずかまきが名前を呟き首元にすり寄った。


「っ!!」


気づいたら体が動いていた。まきの腕を掴み、逃げられないように抱き締める。


『敦っ………くるしいっ……』

「ごめん、少し我慢して」


離したくなかった。少しでも腕の力を緩めればまきがいなくなってしまう気がしたから。
こうしていないと物凄く不安になった。

紫原の心を読んだかのようにまきは優しく抱き締めた。
こちらも力一杯、紫原の不安を拭うように。


「……………ねぇ、まきちん……俺のものになってよ」

『……………………………………いいよ』



― ― ―



『敦ぃぃー!!……とうっ!』

「ぶっ!」


付き合いだしてから10日余り、普段とは変わらず二人はじゃれていた。
まきの最近のマイブームは紫原に飛び付く事。
本人曰く、『敦がしっかり支えてくれるから安心して身を預ける事が出来る』だそうだ。


「いってー……何すんのまきちん〜」

『いったぁー……ごめん、敦。勢いつけすぎた…』


飛び付いた拍子に紫原とまきの頭がぶつかった。


「んも〜、気を付けてよね〜」

『めんごめんご』

「やぁ、まき」

『あ、室ちんだー』

「室ちんだー」


そこへ授業を終えてきた氷室がやって来た。


「相変わらず仲良いな」

『にししー!』

「ところで敦」

「あ、何?」

「Read to cherish her」

「なっ………なんで室ちん知ってんの!!?」

『…………………は?なんて?りーど……なんつったの?室ちんなんつったのー!?』

「敦に聞いてごらん?」


着替えてくるよと言ってそそくさと氷室は去っていってしまった。
紫原は氷室の言葉に驚きを隠せなかった。


『…ねぇ敦ぃ』

「し、知らねーし…」

『まだなんも言ってないし』

「知らないったら知らないしー!」

『敦のケチぃー!おーしーえーてーよー!』

「ぐえっ!」


首を絞められながらも絶対に言わないと誓った。だって恥ずかしいし…。

(室ちんに言われなくたって分かってるし…)

周りがなんと言おうとまきを離す気は微塵もない。
一生かけて護っていく。この先、何があってもだ。



−終−
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