書物‐弐‐
□魔人の気遣い
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ネウロは考えていた。
どうすればこの地上で最も大切なまきを傷付けることなく愛せるのだろうか、と…。
以前抱いた時、まきに『手袋のままは嫌』と言われたのだ。
けれど、手袋を外せば鉄をも切り裂く鋭い爪が体を傷つけてしまう…。
(…この手では駄目だ、手そのものを変えてしまおう)
(人間と同じように……爪を短く……)
「…これならば、傷つかずに済むだろう。
我が輩如きが、たった1人の小娘にこうも振り回されるとはな……クククッ…面白い…」
ガチャッ…
『おはよーネウロ』
「マキか………ミジンコも一緒か」
「ちょっと、なんで私を見た途端ガッカリするの?」
「貴様はいない物だと思ったからな」
「何それ!まきとは学校違うけど一緒に帰ってくるんだから一緒に来るのは当たりまでしょ!?」
「フン、ウジムシ如きが我が輩に口答えするな」
『あかねちゃん、おはよー』
「♪…!!」
『?…げっ』
あかねが慌てて指す方を見ると、そこには弥子の頭を背中の方に曲げている魔人様の姿が…。
まきは溜め息をつきながらネウロを引っ張る。
日常茶飯事すぎて慌てる気にならない。
『ちょっと、やめて』
「…」
「あー助かったぁぁぁ」
『弥子大丈夫?頭取れてない?』
「な…なんとか」
「…チッ」
「『オイ』」
舌打ちしたネウロは椅子の方へ戻った。
弥子は途中で大量に買ってきたパンを美味しそうに食べ、まきはあかねとパソコンを見ながら雑談。
この日は謎を含んだ依頼は来ず、夜に解散となった。
『謎、無くて残念だね』
「フム、このまま謎を喰えなくては飢え死にしてしまう。
マキを喰えば我が脳髄の空腹は満たされるかもしれんな」
『っ……変態』
「フハハハハ」
― ― ―
「マキ、此方に来い」
『ん?何?』
風呂上がりで髪を乾かしているまきを呼び、膝の上に乗せる。
「我が輩の手袋を取ってみろ」
『手袋?』
「そうだ」
『?』
不思議に思いながらも、言われた通りに手袋を外してみる。
『!!』
「驚いたか」
『え…これ…』
「貴様の為に魔人の手を人の手に変形させたのだ」
『…俺のために…?』
「そうだ。愛している貴様を、傷つけたくない」
『……っ』
「…マキはいつも泣くのだな、この泣き虫め」
『ぐすっ……だってぇ…』
「フゥ…手間のかかる小娘だ」
『ん…』