書物‐弐‐

□一時の休息
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遠方へ情報収集に行っていた自来也。
本来なら帰ってきてすぐに火影へ報告に行くのだが、今日は違う。
今、恋人で木の葉の忍の上忍であるまきが過酷な任務から帰ってきている日だから。
里の中でも草木の多い森の中へ足を運ぶ。
綺麗な小川が流れている森の中の小さな湖がある少し開けた場所。

そこに自来也より倍の大きさの4匹の黒い狼が寄り添って寝ている。
まきの口寄せ獣だ。
人の気配を察し、そちらを見ながら唸りだす。
それが自来也だと分かると、尻尾を振り唸るのをやめる。

自来也は4匹の頭を撫でて1匹に背中を預けて寝ている恋人の顔を覗いた。
口布で半分隠れているが、顔色は悪くない。


「…良かった」


まきの綺麗な黒髪を撫でてやると、うっすらと目を開けて自来也の方を見た。


『…おかえりなさい』

「あぁ、ただいま」

『今回は早かったんですね』

「有力な情報が運良く手に入ったんでな」

『それは良かった』

「まきは?」

『ん?』

「怪我、しとるだろ」

『……してません』

「嘘つけ」

『嘘ついてません』

「ワシに隠し事が出来ると思うか?」

『…やっぱりバレたか』

「はぁ…どれ、見せてみろ」

『ほんのかすり傷ですって』

「いいから見せろ、それともワシがここで脱がすかのぉ?」

『変態』

「いだだだだだ!こらっ、お前ら!ワシを噛むな!!」


恋人であるまきに冗談で言ったつもりでも、4匹には一切通じない。
何故なら、顔は本気だったから。


『ほら、やめなさい』

「全く…まきの事になると容赦ないのぉ」

『自来也様、信用ないんですね』

「うっさい!さっさと傷口見せい!」

『はーい』


言われた通り、服を脱ぎ傷口が見えるようにする。傷は左脇腹にあった。
ただのかすり傷とまきは言っていたが、実際はかなり深く応急処置であててあるガーゼが本来の色を失うくらい真っ赤に染まっている。
それを見た自来也は胸が締め付けられ、まきを抱きしめずにはいられなかった。


『っ、…?』

「…この大バカ者……」

『…ごめんなさい』

「どうせお前の事だ、直感で動いて仲間を庇ったのだろ」

『なんでもお見通しなんですね』

「当たり前だ、ワシを誰だと思っとる」

『俺の素敵な旦那様…かな?』

「…分かればよろしい」


傷の処置が終わり、服を着るとまきは自来也の腕の中に再び納まった。
がっちりと抱きしめられていて、身動きが取れない。


『…あの、動けません…』

「動かんでいいわ。また無理するかもしれんからのぉ…少しは休め、また任務だろ」

『…知ってたんですね』

「当然だ、お前の任務の情報は全部綱手から聞いておるわい」

『あぁ、だから…』

「あまり心配させるな」

『…忍だから無理ですよ』

「少しは努力せい」

『痛っ』

「いだだだだだ!だから噛むなっつーの!!」

《《《《ガルルルル…》》》》
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