書物‐弐‐
□お約束
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木の葉の里にある火影岩。
歴代の火影の顔が刻まれており、里のどこからでも見る事が出来る。
まきは、3代目猿飛ヒルゼンの頭のに胡坐をかいて風に当たったていた。
任務に行っている恋人のカカシを想いながら。
−まき、俺と付き合ってよ…−
5年前、今と同じように2人で火影岩の上で風に当たっている時にカカシに告白をされた。
小さい頃から好きだった…でも、敵わない恋だと思い口にはせず。
まさかカカシも同じだったとは思わず、初めはビックリしたけど、嬉しかった。
お互い上忍で任務が忙しくて普通の恋人のようにはいかないけれど、休みの日はどちらかの家に行きご飯を食べ、一緒に寝る。
ただそれだけの事でも幸せだった。
付き合い始めてから、どちらかが任務の時は火影岩の上で待つというのが2人のお約束になっていた。
『早く帰ってこないと、浮気しちゃうぞー…』
夕陽を見ながら呟いた一言は涼しい風に流されていってしまい、誰にも届くことはない。
段々と日が落ちてゆくと体が冷えてきて身震いする。
不意に、誰かに抱きしめられた。
顔を見なくても匂いと視界の端から見える口布で誰だか分かる。
『…おかえり、カカシ』
「ただいま、まき」
『お疲れ』
「ありがと」
『…報告は?』
「してきたよ。ちゃんと休みももらった」
『そっか。…じゃ、買い物して帰ろ』
「ん」
手を繋ぎ、お互いの体温を確かめ合い今日も大切な人が自分の隣にいる事に安堵する。
これも2人の間だけのお約束。
「今日、おかず何?」
『秋刀魚』
「ホント?早く帰ってきて良かった」
『魚屋のおじさんにね、良いのが入ったって連絡貰ったの』
「俺達ツイてるね」
『そうだね』
お互い焼き魚が好きで、任務疲れを労うためにカカシが任務の時は秋刀魚でまきが任務の時は鮭。
これもお約束。
2人でお風呂に入り、2人でご飯を作り、2人で食べる。
2人だけのお約束は何気ない事ばかりだけど、それがとても心地いい。
「明日、まきに良い物あげるよ」
『明日?今じゃなくて?』
「そ、明日…お前誕生日でしょ?」
『…あ、忘れてた』
「やっぱり」
『別に祝うような年でもないけど…』
「良いの、俺が祝ってあげたいんだから」
『ありがとう、カカシ』
「どういたしまして」
ベッドに2人で一緒に入って抱き合うのも、一緒に朝を迎えるのも2人だけのお約束。
−終−