書物‐弐‐
□ごめんなさい
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『リー、あんな馬鹿放っといて行くよ!!』
「あ、はいっ!」
「え…ちょっ」
『ガイ!リーをしばらく借りるからね!!』
「あ、あぁ…」
「まき、ちょっと待って…!」
『ふんっ!!』
「…ありゃー、相当怒らしたな…カカシ」
「煩いよ髭…はぁ……」
「しばらくは口を利いてくれんだろうな」
「分かりきってる事言わないでよ…ガイ」
「ん?あぁ、すまんすまん」
「はぁ……」
たまたま通りかかったアスマに鼻で笑われるわ、ガイに事実を言われるわ……もう最悪。
何故彼女があんなに怒っているのか…。
事の発端はついさっき、火影邸で起こった…まぁ…事故なんだよね、わざとじゃなくて。
1ヶ月くらい前に後輩が俺に好意を抱いているというくの一を紹介してきた。
その子とは何度か火影邸ですれ違って挨拶をかわすかほんの少し話す程度だったんだけど。
さっき会った時、重そうに荷物を持ってたから手伝おうとしたらバランスを崩して2人同時に倒れてしまった。
倒れたこと自体に問題ない、ただ…その時の体勢が非常にまずかった。
その子の上に俺がいて、まるで押し倒しているかのような感じ。
彼女も顔をトマトのように真っ赤にしちゃって。
その瞬間をまきに見られちゃったわけ。
弁解しようにも話を聞いてくれなくて、まきがガイ以上に可愛がっていたリーを連れてどこかに行ってしまった。
しかも……手まで繋いじゃってまぁ………。
どうしよう…ショックがデカすぎて立ち直れないかも……。
― ― ―
カカシがこの世の終わりかというほど落ち込んでいる頃、まきは実の弟のように可愛がっているリーを連れて甘味処に来ていた。
『全くっ…いくら昔女癖が悪かったからって彼女がいるにもかかわらず火影邸であんな事する!?
女の子の方もまんざらでもない様な顔しちゃってさ!!
カカシもさっさとどけばいいのにどかないってどーいう事よ!!!』
「きっと、カカシ先生にも何か事情があったのではないでしょうか?
カカシ先生ほどの方がまきさんというお付き合いをしている方がいるのにわざわざ他の女性に何かするなんてありえません!
きっとそうですよ!元気出してください、まきさん!」
『…そうだね、カカシがわざとそんな事する訳ないよね。
ありがとう、リー。あんたってほんとにいい子だね』
「ん…へへっ」
怒りに任せてカカシへの不満を息継ぎなしで吐き出すと、俺の可愛い天使が慰めてくれた。
頭を撫でてやると目を瞑ってくすぐったそうに笑う。
うん、今日も可愛い。めっちゃ癒された。
団子を頬張って、まるでハムスターだ。
カカシとの仲直りをどうするか、2杯目のチョコレートパフェを食べながら考える。
確かに、リーの言う通りカカシのした事はわざとではない。
まわりに散らかっていた書類などの状況を見れば何んとなく察しがついた。
けど、女の顔を見た瞬間言葉にしがたいどす黒いものが俺の心を埋め尽くした。
カカシが必死に何か言っていたけど何を言っていたかは聞いてない。
ちょっと…可哀想だったかな…。
「まきさん、カカシ先生と仲直りしましょう!きっとカカシ先生も同じこと考えているはずです!」
『……そうだね、過ぎた事をうだうだ言ってても仕方ないよね。行こうか』
「はい!」
会計を済ませ、また手を繋いでカカシと喧嘩別れした場所へと向かう。
そこでは、無駄に明るいガイと今にも崖から身を投げそうなカカシがいる。
「カカシぃ!まきは必ずお前のもとに帰ってくるさ!
リーと一緒にいるんだ、心配するな!!」
「うん…そうね…」
「ガハハハハ!!…ん?おぉ!噂をすればなんとやらだ!」
「…!!」
『…』