書物‐弐‐
□彼女
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「まき」
『…あ、カカシ』
「買い物?」
『そ、夕飯のお買い物』
「今日、何?」
『かつ丼。カカシ、今夜から長期任務でしょ?』
「…知ってたの?」
『さっきアスマに偶然会って聞いたの』
「あの髭め…」
五代目火影様に今度の任務内容を確認して街を歩いていると買い物をしている彼女を見つけた。
たまらず声をかけると嬉しそうにこちらを向いて俺の名前を呼ぶ。
その笑顔にいつも癒される。
「荷物、持とうか?」
『これくらい大丈夫、カカシこれから任務なんだから体力温存しとけば?』
「温存って、俺そんなにやわじゃないよ」
『いいの!念には念をでしょ?』
一度こうと決めた事は無理にでも通そうとする意外と意地っ張りなまき、そんな頑固者に俺はいつのまにか一目惚れをしてした。
素早くまきから荷物を奪い手を握ると、ムッとした顔でこちらを睨む。
『別に平気だってば』
「いーの、俺がしたかったんだから」
『………ありがと』
「どういたしまして」
照れくさそうに下に俯きながらボソッと呟く横顔は、まだ幼さが残っていた。
風呂から上がるといい匂いがしてきて食欲をそそる。
「わ、すごいね」
『暫くは満足に食べれないと思うから、今のうちに沢山食べてね!』
「ありがとまき、いただきます」
服を着替え、玄関に向かうと後ろからちいさな足音が追ってくる。
振り返れば少し不安げな瞳と目が合う。
『…』
「まき」
『…………怪我、しないでよね』
「分かってる。必ず帰ってくるよ」
『ん…』
俺より少しだけ小さな体を抱きしめると、細い腕が力いっぱい抱き着いてきた。
顎を持ち上げて額にキスをすれば瞳の中の不安な色は薄れていた。
何か言いたげな唇に自分のを重ねると背中に回っていた腕が首へとまわり、もっととせがんでくる。
『いってらっしゃい』
「あぁ、いってくる」
必ず、お前のもとに帰ってくるよ。
その時は、眩しいくらいの笑顔で迎えてよね。
−終−