書物‐弐‐

□冬の幸せ
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曇り空の中、部活に所属していないまきは部屋で録画していたドラマを観ながら暖かいコーンスープを飲んでくつろいでいた。
観終えて、さて買い物にでも行こうかと思い窓の外を見ると白いものがちらついていた。


『…あ、雪!』


勢いよく窓を開け放ち、ベランダに出ると道路はうっすらと化粧をしたかのように積もっている。


『…………………うん、寒そう』


何も見なかった…と呟きながら静かに窓を閉める。スーパーまではそう遠くはない、だが行くまでが辛い。
しかし買い物に行かないと冷蔵庫の中がすっからかんである。
どうしようか迷っていると携帯が鳴った。ディスプレイを見ると1年先輩であり恋人の実渕からのメールだ。


――――――
From : 玲央


今どこにいるの?
部活が早く終わったからそっちに向かうわ。
ついでに買い物もしてくるから欲しいもの言いなさい。
――――――


『え、まじで?』


何故分かったのだろうか。驚きつつもまきはメールで欲しいものを伝えた。
しばらくすると玄関の鍵が開く音が聞こえ、まきは小走りで向かう。


『おかえ…さっぶっ!!!』

「ただいま。あんた買い物ぐらいこまめにしなさいよ、重いじゃない!」

『だってぇー、寒いんだもん』

「スーパーの中は暖かいでしょ」

『でも外は寒い』

「あんたねぇ…太っても知らないわよ?」

『それはヤダ!』

「じゃ、動きなさい」

『ぶぅー』


最もな事を言われて言い返せないまきはブーブーと言いながらソファーに座り、実渕は買ったものを冷蔵庫に入れていく。


「ねぇまき、ちょっと目をつむってくれない?」

『ん?目?』

「そ、良いって言うまで開けちゃダメよ?」

『はーい』


キチンと目を閉じているか確認すると、ある物を鞄から取り出してソファーに腰かけた。
自分より小さいまきの腰に手を回しそっと抱き寄せる。


「目、開けていいわよ」

『ん……?玲央、この箱何?』

「開けてみて」

『うん』


言われた通り開けてみると、中にはシルバーのネックレスが入っている。
実渕を見ると、愛おしそうにまきを見つめていた。


『これ…』

「クリスマスプレゼントよ、あなたへの」

『!』

「つけてあげる」


箱からネックレスを取り出しそれを首にかけると、いつの間にか雪が止んだ空から差し込んできた光でキラキラと輝いた。
細いチェーンに小さくてもその存在をしっかりと強調しているパールがついたシンプルなデザイン。
嬉しさのあまり、勝手に目が潤み視界がぼやける。


「とても似合ってるわ」

『玲央…ありがとう』

「どういたしまして」


どちらともなく近づきキスをした。互いの体温を確かめるように体を抱き寄せながら。


−終−

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