書物‐弐‐

□暇つぶし
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『おっはよー!』

「では下僕2号、仕事をサボるなよ」

「だから俺はテメェの下僕じゃねーっつってんだろ!!」

『あれ、ネウロと弥子どっか行くの?』


学校を予定より早めに切り上げて寄り道をせずに大好きな彼のいる事務所に直接向かった。
ドアを開けるとネウロと弥子が丁度どこかに出かけるところだった。


「嗚呼、謎の気配を感じたのでな…我が輩達は出かけくる」

『いいなー俺も行きたーい』

「マキは下僕2号と留守番だ」

『えー…』

「今日体育の授業で足首を捻っていただろう。だから駄目だ」

『ゔ……ミテタンデスネ…』

「当然」

「嘘っ、まき足捻ったの!?」

『うん、でも軽い捻挫だったから大したことはないよ』

「…よかったぁー」

「行くぞミジンコ、マキ…無理に動くなよ。何か欲しいものがあれば下僕2号にすべてやらせるのだ、良いな?」

『大丈夫だって!無理はしないから』

「……最悪我が輩を呼べ、すぐに駆け付ける」

『ありがと』


心底心配そうなネウロは俺に触れるだけのキスをすると、弥子の頭をわしづかんで出かけて行った。
二人を見送ってから俺はソファーに腰を下ろす。


『よいっ……しょっと…』

「大丈夫か?」

『うん、足以外は全然平気…自由に動き回れないのが残念だけど』

「そうか……あの化け物に言われたからじゃねーが、なんかして欲しいことがあったら言えよ」

『ありがと、忍ちゃん』

「…おう」


なんか忍ちゃんが優しいと気味悪いね、なんて他愛もない話をした。


「はぁ…なんかこう話してるだけってのも暇だな……ババ抜きでもやるか?」

『忍ちゃん…ルール知ってんの!?』

「たりめーだ!ババ抜きぐらい知ってるわ!」

『ぶふっ!冗談だよ冗談』


チンピラがババ抜きなんて…ネウロが見たらきっと笑うだろうな。


「ほらよ、テメーからでいいぜ」

『んー……よしっ、はい忍ちゃん』

「おう、………だぁー!ババだ…」

『やーい!ババだー!』

「このやろぉー…」


よほど悔しかったのか、何回もババ抜きをやった。でも全て俺の勝ちで、忍ちゃんは一回も勝てなかった。


『……忍ちゃーん、いい加減諦めたらぁ?』

「ぜぇ…ぜぇ……ま…まだだ…」

『俺飽きちゃったんだけど、トランプ』

「まだだっつってんだろ!俺は勝つまでやめねーからな…!」

『えー……』


諦めの悪いチンピラに呆れていると、ネウロ達が帰ってきた。


『あ、おかえりー』

「ただいまー……って、吾代さんどうしたの?」

『ババ抜きでどうしても勝ちたいんだって…』

「目…血走ってて怖いんだけど…」

「アァ!?」

「ひっっ!!」

『ネウロー、飽きたー』

「フム、よかろう…我が輩が終わらせてやる」


そう言うとネウロは忍ちゃんの首根っこを掴んで床に叩き付けた。


「ぐはっ!!!」

「これで良いか?」

『ありがとー』

「……吾代さん、可哀想……」

「我が輩のマキを退屈させていたのだ、当然の報いだろう」

『いったそー』


やっと解放された俺はネウロに抱き上げられ、膝の上の定位置に座らされた。


「マキ、何故我が輩を呼ばなかったのだ?」

『ん?だって、呼ぶほどの事でもないし…謎解きの邪魔したら悪いと思って』

「…そうか」


ネウロは俺の頭を撫でると今日の事件について話してくれた。
彼といると楽しくて仕方ない…床で伸びている忍ちゃんには悪いけど。
深夜にようやく目が覚めた忍ちゃんは次の日、ジェンガを持ってきて勝負を挑んできた。
…もちろん勝つまで。



−終−

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