書物‐弐‐
□共同作業
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パチッ…………パチッ…………
『………違うな……………これか?……あ、やっぱそうだ』
まきは紫原の寝ている横でパズルをしていた。
目覚ましをセットした時間より早く起きてしまい、物凄く暇だったので先日買ってきてパズルをやろうと思い立った。
絵柄はスペインのサグラダファミリア、建築物が好きなまきらしいチョイスだ。
「んん…………………まきちん……?」
『あ、おはよう敦』
目が覚めた恋人にキスをすると紫原はふにゃりと笑った。
「朝から何してるの?」
『この前買ってきたパズルやってるの』
「へ〜……………」
『……顔洗ってきなよ、そのままだとまた寝ちゃうよ?』
「んー……洗ってくる……」
眠気を引きずりながら歩く姿が愛くるしいと思いながらパズル再開。
かれこれ1時間弱はやっているだろうか…。
サグラダファミリア自体は完成していた。
だが問題は周りの風景だった。
まきにはみな同じ色に見えて仕方ない。
『………………………………訳が分からなくなってきた……』
「あらら〜?あと風景だけじゃん」
『うん……でも俺にはみんな同じに見えちゃって…。
敦手伝ってーお菓子あげるから』
「いいよ〜」
二人でやり始めると先程よりかは作業効率が良い。
小さく写り込んだ鳥やらうっすらとある雲やら、だんだんその完成が近づいていく。
『…ねぇ敦、朝ごはん何食べたい?』
「んとねぇ、まきちん〜」
『敦のへんた〜い』
「変態じゃないし〜」
『変態だし〜』
「んとねぇ……しゃけがいい」
『ん、OK』
パズルを紫原に託し、朝食を作り始める。
当の紫原は3分もしない内にギブアップ。
「まきちん〜、分かんな〜い……」
『………諦めんの早すぎぃ』
「お腹すいたし〜、お菓子食べていい?」
『だーめ、ごはんが先』
「ぶぅー」
2mの大きな子供をなだめつつ、鮭を良い具合に焼いていく。
「超うまそう……」
『だよねー、これウチのばあちゃんから送られてきたの。
あとでばあちゃんにお礼言っとこ』
一口食べれば鮭の旨味が口一杯に広がる。
まきはこれだけで幸せだった。
‐‐‐
『…ごちそうさま』
「ん、ごちそーさま」
『よし、パズルやろう!今日中に仕上げちゃる』
「おー」
一つ一つ集中しながら組み立てていき、気づけば9時を回ろうとしていた。
『………お、終わった……』
「やっとだし〜……」
パズルをしていただけなのに何故か汗だくの二人。
完成したパズルはそのままに風呂に入ってさっぱりする。
「なんかまきちんと風呂入るの久々かも…」
『そうだね、仕事の都合でずれるもんね』
「えっちな事したいのにまきいないからずっとムラムラしてるし〜」
『………………敦、当たってる』
「ここでしちゃダメ?」
『ダメ!』
「なんでよー!」
『こんなトコでしたらのぼせるでしょ!?』
「ぶぅ…………ベッドならいい?」
『…………………ベッドならいいよ……』
「よしっ」
『の前に!!』
「は?」
『新しいパズル買いに行こう!』
「はぁー!?なんでよまきちん!」
『だって敦とやるとめっちゃ楽しいんだもん!!』
「っ………」
“もん”と断言されると言い返せなかった。
きらきらした目でこっちを見上げる姿が可愛かったから。
「………今度は何買うの?」
『んとね、日光東照宮と小田原城のパズル』
「ふぅ〜ん……………パズル買いに行く前にしちゃダメ?
」
『………………腰立たなくなったら責任取ってよ?』
「当然だし」
数時間後、案の定腰が立たなくなったまきをおぶりながらパズルを買いに行かされる紫原の姿があった。
『敦ぃー、あれも欲しいー』
「はいはい」
‐終‐