書物‐弐‐

□暑いね
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『…………大輝ぃ……』

「………あー?」

『…………あんた暑くなーい?』

「………じゃ、寄っ掛かってんじゃねーよ……」

『……やだ』

「………………あっそ」


壁に寄りかかって扇風機で涼んでる青峰に寄りかかって涼んでるまき。
二人の間で暑さのせいで全くやる気のない会話のキャッチボールがなされていた。


『…………………あ、そーいえばさ……』

「………あー……………」

『あんたバッシュ買うとか言ってなかった?』

「……………あ」

『どーすんの……』

「あー…………行くよ」

『……………いつ』

「………………夕方」

『へぇー………無くならない?』

「予約してあっから平気」

『ふーん、あっそ……………』


話題がなくなるとやる気のない静寂が広がる。


「………………………………まき………」

『……………なぁに?』

「どけよ…………」

『……………やだよ………』

「あっそ………」


何が話題があれば別だが、何もないので会話が弾みやしない。
何か見つけたとしてもすぐ終わる。


「……………あ、そーいや……」

『んぁ…?』

「お前、映画のDVD買いに行くとか言ってなかったか?」

『……………あ』

「どーすんだよ…」

『……今は暑いから夕方行く』

「オメーも夕方かよ……」

『当たり前じゃん……。
こんなクソ暑いのに外に出ないでしょ、よっぽどの事がない限り…』

「……まーな………」


世間は普通に日中でも出歩いているのに、この二人は全否定する。


『……ねぇ大輝』

「あ?なんだよ」

『プール行って水に浮いていたい…』

「水死体になるつもりかよ…」

『んなわけないじゃん』

「わーってるよ…」


しばらく扇風機で涼んでいると睡魔がやってきた。
近場に落ちてたタオルケットを引っ張るとまきは腹にかけた。


「……人を枕にして寝るなよ」

『…いいじゃん……どうせ夕方まで、何も……しないじゃん………』

「………………寝やがったよ…」


まきの頭を撫でて寝顔を見る。
普段やんちゃな姿からは想像出来ない可愛らしい姿に少し癒される青峰。
一時期は黄瀬に取られそうになった事があった。
けど、黄瀬は見事にフラれた。
何故ならその時すでにまきは青峰が好きだったから。
それを聞いた時はニヤニヤが止まらなかった、と不意に思い出す。


「………くぁ……ぁ……」


何だかこっちまで眠たくなってきた。
まきを抱き締めたまま青峰も眠る。

しばらくして二人でケツが痛いだのなんだのと文句を垂れつつ、買い物に出掛けましたとさ。


『…………大輝』

「あ?」

『今度はちゃんとベッドで寝ようね、痛いから』

「あぁ、だな……」



‐終‐

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