書物‐弐‐

□大事にします
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「………ふぅ、大掃除すると意外とゴミって出るのね」

『うん、小まめにやってたと思ったんだけどねー』


同棲を始めて1年半、玲央の仕事関係で1ヶ月前に引っ越しをした。
引っ越ししてからは小まめに掃除をしていたつもりだった。
しかし大掃除をすると意外にゴミが多い。

ゴミ出しも終え、一段落する二人。
朝からやり始めて今は12時を過ぎていた。


『……お腹すいたー死にそうー』

「そうね、お昼にしましょうか」

『さんせ〜い……』

「何が食べたい」

『んー……さっぱりとうどんがいいなぁ』

「分かったわ」


リクエスト通り玲央がうどんを茹で始めてくれる。
その間まきは、箸やらなんやらを用意。
遊び心でテレビの前に骨董市で格安で手に入れた小さめの龍の置物を置く。


「あら、それどうしたの?」

『こないだの骨董市で一目惚れして買っちゃった!』

「まきってそういうの好きよね。私服も龍の柄とかあるし、ヤクザだと思われちゃうわよ?」


冗談混じりで玲央が言ったら、次の瞬間まきの口からとんでもない言葉が出た。


『あ…そー言えば一昨日ね、警官に職質されちった』

「はぁ!?」

『あははははは!』

「笑ってる場合じゃないでしょ!何もされてないわよね?
その警官どこの署なの、とっちめてやるわ!!」

『いやいやいやいや駄目でしょ!警官とっちめちゃ!!』


言ったら案の定、玲央は血相を変えて騒ぎだした。
しかも警官とっちめるって…。
流石にそれはヤバイので止める。


『平気だって!その警官知り合いだったから、大丈夫!』

「…………………………本当に?
本当に何もされてないのね?」

『ホントに本当!!』

「……ふぅ………ならいいけど」


ほっ…と、まきは胸を撫で下ろした。
知り合いが一人死ぬところであった。


「驚かさないでちょうだい。あんたは昔から危なっかしいんだから」

『ハイ…スミマセン……』


うどんを食べながらこの後何しようか二人で話す。
足りない物を買い足したりしなければいけないだとか、今更ながらあれ買ってないとかいろいろ。

気づけば午後の7時を回ろうとしていた。
玲央はまきを先に風呂に入らせ、その間に夕飯の準備をする。


『玲央ー、上がったよ』

「頭ちゃんと乾かした?」

『うん、乾かした』

「どれどれ………ちゃんと乾かしたわね、えらいえらい」

『玲央も入ってくれば?』

「えぇ、そうするわ。
あっまき、今弱火で煮込んでるから様子見て火止めてね」

『オッケー』


今夜はチキンカレー。
玲央の作るチキンカレーは絶品で、ファンの間でも人気が高い。
デザイナーであるが料理本も出していて、事務所にはファンレターがごっそり届く。

段ボールが一杯になるほどの量を整理していると頭の弱いまきは玲央の職業がなんなのかたまに分からなくなるという。


「お待たせ、食べましょ」

『うん!』
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