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□サニー・サイド・アップ
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君に、相当な間抜けな面を晒しただろうな。




「私のパジャマ、ある?」


可愛らしさの欠片もない、グレーのスウェットの上下。自分の寝間着用にと適当に買ったはいいが、襟首にゆとりがないわ思いの外短く足首が丸出しになるわでタンスの肥やしになっていたものを、君がサルベージしたやつだ。そんなザ・部屋着みたいな服でも、君が着ると不思議と格好いい。真っ赤なリップを引いて、クラッチバッグに黒いエナメルのヒールで出かけたら、きっと誰もが彼女はモデルか何かで、ああいう格好が流行りなのだろうと納得する。
外は寒い、早く中に入りな。
ーーずっとあるよ。クローゼットの中、収納ケースの一番左、上から二番目に。






何年振りかで君のおでこに触れた。焼きたてのホットケーキみたいにすべすべで、熱い。


「いつから?」
「……寒気と、頭が痛いのは昨日の夜から。あと咳は今朝から少しだけ」
「熱があるのにそんな足出してたらダメでしょ。ほら今パジャマ出すから、着替えて。風呂は、いや、今は入んない方がいっか。寝て起きて汗かいてたらにしよう。あ、待って、シーツ取り替えんね。食欲は?ある?何か食べれそう?」


ひと息に話しながら、ばたばたと動き回る。その方が余計なことを考えないで済む。風邪かな、やっぱりそういう時はお粥かな。米も卵もあるし、あ、ネギがねェな、買いに行った方がいいかな。


「サンジ君のパスタが食べたい。辛い、シーフードのやつ」
「……風邪っぴきが食うもんじゃねェでしょ」


不意を突かれた。
それはおれの好物だって、知ってて言ってんのかね、この人は。
結局納得いく辛口海鮮パスタを作るためには食材が足りなくて、ナミさんが着替える間に、おれはスーパーに走ることになった。




「おいし」


ナミさんはよく食べた。絶対喉にも消化にも良くないだろうと思って、少しでも病人向けっぽいものをと急ごしらえで作ったちょっとぬるいゼリーも、綺麗に平らげた。
薬は、と聞いた時だけ少し嫌そうな顔をして、寝れば治るからと、当然のようにおれのベッドですうと眠ってしまった。
あのスウェットを着て。




「……なんで、風邪引いてんのに、医者のとこ出てきちゃうの」


つい漏れた本音はナミさんの耳には入らずに、替えたばかりの青いシーツの上で居心地悪そうにうずくまった。
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