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□土曜日、ロマンチック昼ごはん
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ーーああ、雨か。


カーテン越しに聞こえる雨音は、一週間の疲れを溜め込んだ身体には心地良い子守唄。洗濯物が外に干せないのは残念だけど、ゆっくり起きてブランチを楽しむのも悪くない。……あ、でも待てよ。
ベッドの中手探りでスマホを探し、浮き上がる時刻表示を二度見して、魂だけ台所へ飛ばす。そういえばうちには何にもなかった。


「とりあえず起きるか……」


どこかカフェにでも行こうか。それとも雨が強くなる前に、買い出しを済ませた方がいいだろうか。まずはのんびり、淹れたてのコーヒーでもーー


ーーピンポーン!




「おはよう……ってごめん、もしかして起こしちゃった?」
「んー、さっき起きたとこ。どうしたのサンジ君、もうとっくに仕事行く時間じゃない?」


土曜日でものんびりさせてもらえないのがメゾン・ド・パイユ。コーヒーの香りを嗅ぎつけておれにもくれと騒ぐ三人はしっしと追い払って、申し訳なさそうなサンジ君だけ玄関に上げる。


「本当ごめんね。や、来週末三連休で忙しいから、それに備えてって訳でもないけど今日はジジィが休みくれたんだ。で、さ。コレ、知り合いのツテで貰ったんだけど、どう?今日のお昼」
「?……!タダ!?」
「勿論。おめかしして来て?待ってるから」


ちょっとフォーマルな格好のサンジ君が、チケット片手に嬉しそうに笑った。




「すごーい!憧れのホテル・トットランドのランチブュッフェがタダなんて〜〜!!」
「料理は勿論、ここはスイーツが絶品だから、余力残しといてね?オイお前らは離れろ!連れだと思われたくねェ!」
「なんだよ、サンジが連れて来たんだろ!」
「おれはナミさんと二人きりが良かったんだ!!お前らが六名様まで、なんて但し書き目ざとく見つけやがるから!!」


厳密なドレスコードがある訳じゃないけれど、そこは高級ホテル。ルフィにはサンジ君のジャケットを着せて、サンダルをなんとか小綺麗なスニーカーに替えさせた。サイズが合わないゾロにはもう冠婚葬祭用のスーツ。


「飯食うだけだってのに、んな堅っ苦しい格好……」
「うるせェ!嫌なら帰れ!」
「ルフィ、くれぐれも静かにね?」


小声で言い争いながら、レストランに足を踏み入れる。広々としたホールに所狭しと並ぶ料理の色と匂い、目の前で焼かれる音の洪水に、ルフィじゃなくても生唾を飲み込んだ。
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