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□金曜日、バイオレンス夕ごはん
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とりあえずお味噌汁はお湯で三倍希釈してなんとか通常の塩分濃度にすることに成功した。ふっくら炊きたてで少し柔らかめに感じるごはんを一口放り込んで、口いっぱいに甘味が広がったところに鯖味噌を投入。噛めば噛むほど甘くなるお米に助けられて、少しずつしょっぱいおかずが減っていく。後は何かお野菜が欲しいところだけど、生憎うちの冷蔵庫もすっからかんだし。明日はちゃんと買い出しに行って、野菜をいっぱい摂ろう。


「はあ〜〜……あんた、食事はもっとちゃんと気を付けないと。コンビニ弁当とかカップ麺ばっかりじゃダメよ」
「母ちゃんか!だからこうしてたまにはメシ作ってんだろ」
「こんなしょっぱいなら自炊しない方がなんぼかマシよ」
「酒要らねェんだな」
「うわぁーゾロ君の作ったごはんは美味しいなーー」


やっぱりお酒は同程度に強い人と飲んだ方が楽しい。仕事の話、仲間の話、高校時代の話。美味しいお酒は朴念仁の口も軽くして、次から次へと手品の万国旗みたいに話題が引っ張り出されて盛り上がる。
金曜の夜の開放感も相俟って、ついつい声のボリューム調節まで気が回らなくなって。


「声がしたからさ、お前ら二人だけ?」


ドアを叩く音に応えると、特徴的な長い鼻がぴょこりと覗く。ちょっと騒々しくし過ぎちゃったかしら、今日はうるさ方筆頭も不在だというのに。


「おうウソップ、お前も飯食ってくか?」
「え、いいの?サンキュ、これから飯炊くの面倒だったんだ」


自分用に買ってきたのだろうに、律儀なウソップは下げていた近所のスーパーの袋から半額シールが貼られたお惣菜を取り出して、いそいそと並べ始めた。鳥の唐揚げ、いんげんの胡麻和え、里芋のそぼろ煮。……うーんウソップ、やっぱりあんたよく分かってる。着ているパーカーが割烹着に見える不思議。


「ルフィと一緒じゃないの?」
「や、おれたちだっていつもつるんでる訳じゃないぜ。大学もまあ近いけど違うんだし。そういやアイツ、今日は兄貴たちとメシ食うって言ってたような……おっコレゾロが作ったの?スゲーな、美味そうじゃん」


ウソップはいただきまーすと声を弾ませてお椀に口をつけると、ずず、とお味噌汁を流し込んだ。


「ーーっしょっぺェ〜〜ッ!!!」
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