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□金曜日、バイオレンス夕ごはん
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「メシ、食ってくか?」
「……珍しいこともあるもんね」


102号室に入るのは久しぶり。別に避けてた訳じゃない、この部屋でごはん会が開催されることはまずないからだ。
住人は仕事柄、仲間うちで最も不規則な生活をしており、自炊もあまりしない。


「たまにはな。適当に目についたもの買って作ったら、四人前くらいになっちまった」


台所でがちゃがちゃ派手な音を立てながら、ゾロが言う。
今日は残業で随分遅くなってしまい、夕飯を調達せねばと思いつつも、どこにも寄る気力が湧かず家に帰って来てしまった。ちょうど鍵穴に鍵を差し込んだところで、隣の部屋のドアが開いた。滅多にない誘い、ここはありがたく乗っかることにする。


「今日休みだったの?」
「非番。夕方まで寝てた」
「ルフィとウソップは?」
「知らねェ」


金曜日だもの、接客業のサンジ君は忙しいだろうし、学生組は飲み会かもしれない。
ゾロと二人きりなら誰も止める人がいないから、飲み過ぎないように気をつけなくては。まあ自分の部屋は隣だから帰りは気にしなくていいんだけど、前にゾロと二人うっかり朝まで飲んでたら、後でサンジ君が泣いてうるさかったからね。


「……うーん、茶色」
「なんか文句あんのか」
「や、いただきます」


運ばれて来たのはごはんとお豆腐のお味噌汁と鯖の味噌煮。ザ・男の料理。青菜とかにんじんとかそういう色味を加えようという心配りは皆無で、ただただ白と茶色の食卓。サンジ君の繊細で彩りにもこだわった料理やウソップのカラーセンスに慣れた身としてはちょっと不満だけど、ご馳走になるんだからそういうことを言ってはいけない。大事なのは見た目より味。


「っっしょっぱっっ!!」
「あぁ!?そんな訳……あー……まあ、アレだ。濃いな」
「味噌が濃いってことはしょっぱいってことでしょうが!!メインが鯖の味噌煮なら汁物はなんかこう、野菜スープとかお吸い物とか、味噌使わないヤツにしなさいよ!両方ともこんなにしょっぱいって、どんだけ味噌使ったの!?成人病で殺す気か!!」
「うるせェな!!しょっぱいモンの方が酒が進むだろうが!!」


まだ白米があって良かった。これでごはんが味噌おじやとか味噌煮込みうどんとかだったら、多分ゾロのこと一升瓶で殴ってたわ。
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