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□水曜日、アーティスティック朝ごはん
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確かに思ったわよ?
いつも皆で揃ってごはんを食べられたらいいなって。わいわい騒ぎながら、朝も、昼も、夜も。




「でもまさか、昨日の今日だとは思わないじゃない?」
「何ブツブツ言ってんだ?それいらねェならくれよ」
「食べるわよ!」


ちょっと感じたさみしさをワインで流し込みながらついだらだらと飲み食いし、別れてからほんの6時間後。叩き起こされて今度は104号室。
目の前にはインスタ女子が涎を垂らして写真を撮りまくりそうな、フォトジェニックなパンケーキ。


「いや、なんか早く目ェ覚めて、たまにゃちゃんと朝メシ作ろうかと思ってさ」
「あらまあそれは結構なことで。で、なんでそれに私が付き合わされなきゃいけないのよ?」
「そう怒るなって……業務スーパーで買ったホットケーキミックスがな?いつか作ろうと思って隅に押し込んでたまま、気付けば賞味期限間近。冷蔵庫には実家から一昨日届いた旬の果物がたんまり。そして、サンジが昨日デザートを作った余りの生クリームもこれまたどっさり」
「ごめんねナミさん、確かにコレ悪くなっちまうから早く使いてェなと思って、この計画に乗ったおれにも非がある。どんどん焼くから食べて食べて」


パンケーキには罪はない。サンジ君が手際良く焼いて、ウソップが持てるセンスを遺憾なく発揮し、美しくデコレーションしたパンケーキは見た目だけじゃなく、ほっぺたが落ちるほど美味しい。フルーツの酸味が引き立つように優しい甘さの生地は、市販のミックスを使ったとは思えないふわっふわの仕上がりで、有名店の行列に何時間も並ぶのが馬鹿馬鹿しく思えるくらいだ。


「次は何トッピングする?りんごのキャラメリゼとかもあるぞ」
「んまほー!おれ、それ!!」
「ゾロ、蜂蜜いるか?」
「いらね、もう充分甘い」


朝の6時半に何の疑問もなく開催されたパンケーキパーティ。ただ手放しで喜べるほど若くもない、社会人女子の朝は支度が忙しいのだ。大体昨日は結構飲んだし、本当ならまだまだ寝ていたいところなのだけれど。


「……ねぇ、そこのシナモンパウダー取って」


繰り返すが、パンケーキに罪はない。
一食浮くし、とっても美味しいし、朝から皆でごはんが食べられたし。
たった一人、何の色気もない食パンとコーヒーの食卓より、ずっとリッチな朝ごはんなのだから。
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