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□月曜日、スタンダード昼ごはん
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「サンジさんのお祖父様のアパートなんでしょ?空きがあったら入居するのに」
「お家の人が許さないと思うわよ」
「過保護なのよ、お父様も、ペルも。もう子供じゃないのに」


食品サンプルのごとく完璧な色と形の卵焼きをひと口齧って、ビビは溜め息を吐く。気ままな一人暮らしは憧れの対象なのだろうけれど、高級仕出し弁当のようなお昼が毎日用意されて、イケメンの護衛がいる生活の方が余程羨ましい。
私の平日は基本お弁当持参だ。その日の気分や、朝の忙しさによって、コンビニでパンやおにぎりを買うこともある。職場の周りには気軽にランチタイムを楽しめるカジュアルフレンチやパスタのお店もたくさんあるのだけれど、銀行員が制服のまま食事に出かけるのはあまり好ましくないし、それになんといってもお金がかかる。そこ重要。


「今度遊びにおいでよ。サンジ君がいる時だったら、美味しいごはんもつくし」
「ありがとう!でも、諦めてないわよ、空きが出たら教えてね」


お茶目にウインクしたビビには悪いけど、しばらく退去者は出そうにない。一階の1Kは五部屋、空くとしたらルフィかウソップが大学を卒業する時か、私かゾロが遠方に転勤する時か。サンジ君はオーナーの孫だし、勤務先は隣駅だし。二階は単身者向けじゃないから間取りが広い分家賃も一階より高くて、そんなことビビは気にしないだろうけど、生憎こないだご夫婦が入居したばかりだし。


近隣に立ち並ぶアパートの中でも、ひときわ小さな麦わら色の屋根。メゾン・ド・パイユは総戸数七戸の小さなアパートだ。
多分本当は、アパートなんかより駐車場にでもした方がいいんだと思うけれど、老朽化してきたアパートをリフォームして、お家賃控えめで若い人たちに貸しているのは、口が悪いけど孫思いのおじいさんの優しさだと思っている。おかげで毎日仲間に囲まれて、楽しく過ごせているのだから。




「ハイハイハイハイ昼休憩は終わりだよ!!”ひるおわ”!”ひっ”!グズグズしてないでさっさと歯を磨いといで!さァ磨きな!やれ磨きな!!」


私服がいつも赤と緑であることから、陰で『メリークリスマスおばさん』と呼ばれているお局行員に急かされて、お昼休憩は慌ただしく終わってしまった。


さて、と。午後も頑張りますか!
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