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□月曜日、スタンダード昼ごはん
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「……どうやったら、カレーを作る過程で水色のネバネバが生まれるの?」
「こっちが聞きたいわよ!ほんと、ルフィに料理させるとロクなこと起きないから!他の四人で、っていうかほとんどサンジ君か私よね」
「いいなあ、楽しそう。私も一人暮らししたいなあ」


心底羨ましそうに言いながら、ビビはお弁当包みを開いた。ナフキンを丁寧に畳んで、品良くいただきますと手を合わせる。
ビビは職場の後輩で、今はお昼休憩だ。銀行はお昼休みに駆け込む人も多いから、ランチタイムに揃って休憩、という訳にはいかない。今日はたまたまお客も少なく、窓口担当のビビと一緒にお弁当を囲むことが出来た。


「一人暮らししたら、自分でごはん用意しなきゃならないのよ。ところで今日はお重じゃないのね」
「も〜ナミさん、その話はやめて」


本当は働く必要もないらしいお嬢様は、頬を染めて私をぽかぽか叩く真似をする。
出社初日の11時45分、銀行正面に停められた黒塗りの車から、ネフェルタリ家の使用人だという人が『ビビ様のお食事をお持ち致しました』と恭しく重箱を掲げて現れたのは、うちの支店の伝説になっている。


「アレはびっくりしたわね……ん、今日も美味しそう。さすがテラコッタさん」
「良かったらおひとつどうぞ。ナミさんのも美味しそうだわ」
「昨日の残りよ。手抜き手抜き」


昨夜は結局ゾロとサンジ君用に一杯ずつカレーを確保して、残りはルフィが平らげてしまった。鍋肌についたカレーをこそげ落とすのが面倒で、一膳ずつラップして冷凍してあったごはんを解凍し、鍋にぶちこむ。ミックスベジタブルを入れたら彩りも悪くない。リメイクカレーピラフと言えば聞こえはいいけれど、ただのカレー混ぜごはん。それでもカレー鍋を洗う労力が少しは減るし、翌朝つめるお弁当はいつもより豪華になるし、いいことづくめだ。
あとは朝起きてからちゃちゃっと作ったひじき入りの卵焼きと、ほうれん草とベーコンのバター炒め。それからプチトマトを添えて、メインはピラフだから今日はおかず少なめで。


「いただきま……、あ」


箸よりスプーンを持ってくるべきだったと、お客様用のコーヒースプーンを拝借して、ようやくお昼ごはん。
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